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中朝ロ、ミサイル軸に連動 三者で日本かく乱  編集委員 高坂哲郎2017年7月12日

中朝ロ、ミサイル軸に連動 三者で日本かく乱  編集委員 高坂哲郎

2017/7/12 6:30
日本経済新聞 電子版

 北朝鮮の弾道ミサイルの能力が急ピッチで強化され、その結果として日米同盟の根幹がぐらつきつつある。そんな日本の窮状を見透かしたかのように、北朝鮮と中国、ロシアが畳みかけるように揺さぶりの動きに出ている。

■中国海軍、日本領海に侵入

 
米本土に届く大陸間弾道ミサイルの発射後、日本への揺さぶりを強め始めた北朝鮮(写真は4日発射の「火星14号」、朝鮮通信=共同)

米本土に届く大陸間弾道ミサイルの発射後、日本への揺さぶりを強め始めた北朝鮮(写真は4日発射の「火星14号」、朝鮮通信=共同)

 7月2日、日本海から太平洋に抜けようと東進していた中国海軍の情報収集艦「天狼星」が、津軽海峡の日本の領海部分に侵入した。中国の軍艦が日本の領海に侵入するのは、2004年11月の沖縄周辺海域での「漢」級原子力潜水艦侵入事件、2016年6月の鹿児島・口永良部島沖の情報収集艦侵入事件に次いで3回目の出来事となる。1回目と2回目の間は12年も空いていたが、今回は前回からわずかに約1年後のことで、しかも1時間半もの時間をかけて悠然と他国の領海を侵していった。

 中国の情報収集艦は、2016年2月に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した時も、津軽海峡ルートで太平洋に出て、房総半島沖合を行ったり来たりして自衛隊や米軍の電波を収集していた。今回、中国艦が津軽海峡で領海侵犯した2日後の7月4日に、北朝鮮は新型の弾道ミサイル「火星14号」(米国防総省は後日、このミサイルが大陸間弾道ミサイル〈ICBM〉であると認定)を発射しており、中国海軍は北朝鮮の発射計画を事前に知って情報収集艦を太平洋に差し向けた可能性もある。

 続く6日には、ロシアが北方領土を経済特区に指定したことを突如公表した。日ロ両国は昨年、北方領土での共同経済活動を進める交渉に入ることで合意しているが、今回の経済特区指定は一方的な動きだ。ロシアはこれと並行して国後、択捉両島の軍事基地を強化。領土返還の意思がないことを如実に示している。

■日本海、水産庁の船に発砲

 そして7日には、日本にとってよりショッキングな出来事が起きていた。日本海の中央部の「大和堆(やまとたい)」と呼ばれる海底山脈のある付近を航行していた日本の水産庁の船に向かって、北朝鮮海軍の乗組員とみられる迷彩服を着た数人の兵士が短機関銃のようなもので発砲したのだ。本稿執筆時点では日本政府はこの事実を公表していない。銃弾が水産庁の船に命中せず物的証拠が残らなかったこともあって、慎重に今後の対応を検討しているようだ。

 発砲のあった海域は、多くが日本の排他的経済水域(EEZ)の境界付近だったとみられ、水産庁はここで近年増えている北朝鮮や中国の漁船の違法操業を監視していたようだ。北朝鮮は外貨稼ぎの一環で、自国沿岸での漁業権を中国の漁船に売っているとみられており、そうした中国船が日本のEEZ内に入って違法操業する際の「用心棒」のような形で北朝鮮の軍艦がいた可能性がある。

 北朝鮮が日本の艦船に銃撃したのは、2001年12月に九州南西沖で漁船を装った不審船が海上保安庁の巡視船と銃撃戦を展開(同不審船は最終的に自爆・自沈)して以来だ。今回は、武装した巡視船ではなく丸腰の水産庁の船に向かっていきなり発砲しており、その手口は手荒で悪質と言ってよい。

 北朝鮮の強気な姿勢の背景に、4日のICBM発射があることは疑いない。米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究グループは、同ミサイルの射程が最大8000キロメートルに及ぶ可能性があると分析。今後2年程度で、米国の中枢を狙えるようになるとも指摘している。

■中ロ、北朝鮮労働者の受け入れ先に

 
海上保安庁が日本海での監視活動を強化すると尖閣諸島警備と「二正面作戦」になる(写真は、尖閣周辺を航行する中国公船=第11管区海上保安本部提供)

海上保安庁が日本海での監視活動を強化すると尖閣諸島警備と「二正面作戦」になる(写真は、尖閣周辺を航行する中国公船=第11管区海上保安本部提供)

 前回7月4日付の本欄で、北朝鮮が米本土を直接攻撃できるICBMを持てば日米同盟にくさびを打つことができると指摘した。すなわち、北朝鮮が既に大量に持っている中距離弾道ミサイルで日本を攻撃すると示唆した場合、従来は米軍が報復能力を誇示して抑止できたが、新たに北朝鮮がICBMが米本土をおびやかし始めたことで、米軍が日本防衛をためらいかねない状態になるのだ。

 中朝ロの3か国は事実上、一種の「連合」を形成して日本や米国に揺さぶりをかけているようにも見える。ロシアは北のミサイル開発を技術・物資両面で支援。北は経済制裁下でも外貨を稼ぐべく建設労働者などを世界各国に送り込んでいるが、その主な受け入れ先はロシアと中国だ。

 海上保安庁がこのほど「大和堆」付近での警備を強化し始めたのは、7日の銃撃事件を受けてのこととみられるが、北朝鮮軍の艦船が強気な姿勢を維持する場合、2001年の九州沖のような銃撃戦になる恐れもある。また、北朝鮮が今後も日本のEEZ内での違法操業を促すような動きをとれば、海保は尖閣諸島周辺と日本海の警備に同時対処しなければならなくなる。結果的に尖閣の警備が甘くなれば、中国には歓迎すべき展開だ。

 朝鮮半島、日本海、東シナ海、北方領土の諸情勢は連動している。戦後の安全保障の歩みの中で、かつてなく厳しい局面に現在の日本は追い込まれている。けれど大方の人々にはそうは認識されていない。それが最も深刻なことなのかもしれない。

 

高坂哲郎(こうさか・てつろう) 国際部、政治部、証券部、ウィーン支局を経て2011年編集委員。05年、防衛省防衛研究所特別課程修了。12年より東北大学大学院非常勤講師を兼務。専門分野は安全保障、危機管理など。著書に「世界の軍事情勢と日本の危機」(日本経済新聞出版社)。

 
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