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「言論機関の自殺」へと踏み出した朝日新聞2017年12月28日

http://www.kadotaryusho.com/blog/index.htmlより

2017.12.27

「はあ?」。思わずそんな素っ頓狂な声をあげてしまった。昨日、文芸評論家の小川榮太郎氏が、朝日新聞から謝罪広告の掲載と計5千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こされたというニュースを聞いたときである。

日本を代表する言論機関である新聞社が、自社を批判する書籍を発行した人物を名誉毀損で訴えたのだ。「言論」に対して「言論」で闘うのではなく、「言論」には「法廷で」というわけである。

これは、「自分への批判は許さない」という態度を朝日新聞が明確にしたもので、「言論の自由」に対する完全なる否定であることは疑いない。欧米では、この手の裁判は、「スラップ訴訟(Strategic lawsuit against public participation)」として軽蔑される。いわゆる「批判的言論威嚇目的訴訟」である。

大企業など資金豊富な組織体が、一個人を相手取って、威圧、あるいは恫喝といった報復的な目的で起こすものがそれだ。今回は、小川氏個人だけでなく、出版元の飛鳥新社も訴えているから、純粋な「大企業vs個人」ではないが、それに“近いもの”とは言えるだろう。

しかも、朝日新聞は、言論を持たない大企業ではなく、前述のように「言論機関そのもの」である。言論で挑んできた相手に、司法の判断を仰ぐというやり方は、日頃、「言論の自由」に則って、さまざまな報道をおこなっている新聞には、許されざる行為である。

今年10月に出された小川氏の著書『徹底検証「森友・加計事件」 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社)は、非常に興味深く読ませてもらった。朝日が5月17日付一面トップで文科省内部文書の「総理の意向」記事で加計問題をブチ上げたとき、そこで使われた文書の写真が黒く「加工」され、朝日にとって“都合の悪い部分”が読めなくなっていたのである。

このことは、私自身も、何度も指摘しているが、これらのほかにも、マスコミの恣意的な報道の数々を当欄の7月30日付でも、詳しく書かせてもらった。小川氏の評論は、細かい分析に基づいており、モリカケ報道に関心がある人間にとって、間違いなく“必読の書”である。

朝日は、この本が「言論の自由の限度を超えている」とコメントして訴訟を正当化しているが、実際に、ベストセラーになっているこの本を読んだ多くの国民は、そう思わないだろう。

私は、朝日新聞の今回の行動は、裁判官との「密接な関係」なくしてはありえないものだったと思う。裁判官と報道機関とは、想像以上に密接な関係にあることをご存じだろうか。

司法記者クラブと裁判官との間には、折々に「懇親会」が持たれており、グラスを片手に、さまざまな問題について、話し合う関係にある。そこで記者は、裁判の進行具合や判決について、感触を得る。なにより「密接な人間関係」を構築していくのである。

有力政治家との日頃の関係によって、新聞社が一等地に政府から破格の値段で土地払い下げを受け、それが今の新聞社の経営を支えていることは広く知られている。朝日新聞などは、大阪の中之島にツインタワーを完成させ、いまや不動産事業で屋台骨を支えようとしているほどである。

司法とも密接な関係を維持してきた朝日新聞は、選択型実務修習先として司法修習生を積極的に受け入れ、裁判官の社会見学や実務研修に対しても、大いに協力してきた歴史がある。

つまり、裁判官にとって、新聞とは「朝日新聞」のことであり、これに敵対する勢力は、イコール自分たちの「敵」でもあるのだ。

私のデビュー作は、『裁判官が日本を滅ぼす』(新潮社)である(※その後、再編集して現在は『新版 裁判官が日本を滅ぼす』WAC)。

その中でも指摘させてもらったが、社会常識に欠け、事実認定力が劣る日本の官僚裁判官たちは、「権威の序列化」が得意な人種だ。特に民事訴訟の場合だが、訴訟の勝敗を「どっちに、より権威があるか」ということをもとに判断する傾向が強い。

「一個人」と「朝日新聞」ということになれば、裁判官はどっちに軍配を上げるか。いうまでもなく朝日新聞である。個別の事情に踏み込まず、「権威の序列化」に基づき、判決を下すからだ。

これらをバックに、朝日新聞が大いに勇気が湧いた判決が、さる10月24日に最高裁であった。朝日新聞のこれまでの慰安婦報道で「知る権利を侵害された」として、千葉県や山梨県に住む28人が朝日新聞社に1人1万円の損害賠償を求めた「慰安婦報道訴訟」で、朝日新聞の勝訴が最高裁第三小法廷(林景一裁判長)で確定したのだ。

3つの団体から起こされている訴訟は、いずれも朝日の勝訴が続いている。私は、当初から裁判官との「密接な関係」と「権威の序列化」をキーワードにして、住民側の訴えは通らないと予想していた。

周知のように、吉田清治証言や女子挺身隊との混同、あるいは証拠なき強制連行など、朝日の慰安婦報道が現在のように世界中に慰安婦像が建ち、「日本=姓奴隷国家」というレッテルを貼られる元になっている。しかし、そのことが、どれほど明白であっても、裁判官と朝日新聞との“岩盤の関係”によって、ハネ返されているのが実情なのである。

「司法に持ち込んだら何とかなる」――言論機関でありながら、朝日新聞はそんなことを考えているのではないだろうか。それが「言論機関としての自殺」であることを社内で説く人間がいないことが朝日新聞の病巣の深さを物語っている。ジャーナリズムの世界にいる人間として、私にはそのことが信じられない。

カテゴリ: マスコミ,

カテゴリー:Diary

北朝鮮、核の資金源2017年12月27日

極東ブログより転載

http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/

北朝鮮の工作員が日本に多数いるとか、彼らは国際的に活動しているとか、「まあ、そんなの常識として知っていますよ」と言いたくなるが、本書を読んでみると、なんというのだろう、うなだれてしまう。ある種、絶望感のようなものも感じる。ここまで実態はひどいのか。あえて「私たち」と言いたいのだけど、私たちはこの問題に実際は目をつぶっていたのだなと後悔する。

 本書『北朝鮮 核の資金源(古川勝久)』(参照)は副題に『「国連捜査」秘録』とある。著者は国連安保理の下に置かれた北朝鮮制裁担当の専門家パネルに2011年10月から2016年4月まで4年半所属し、北朝鮮の国際的な暗躍を詳細に調べ上げてきた。日本国内はもとより各国に足を延ばし、国連による北朝鮮制裁を北朝鮮がどのように違反し、またどのように、ミサイルや原爆の開発部品の調達や技術収集、さらにそのための資金調達を行ってきたか、それを丹念に調べた記録が本書である。その全貌は、本書目次の次ページの見開きの世界地図にまとまっている。東南アジアでの北朝鮮の暗躍もさることながら、ヨーロッパや中近東での暗躍も目覚ましい。アフリカでの暗躍はここまでひどかったのかと驚くほどだ。しかしよくもまあ、ここまで北朝鮮は国際的な活動ができたものだ。なにが国際的に孤立だと毒づきたくなる。
 もちろん、国連による北朝鮮の制裁を、常任理事国である中国やロシアが率先して妨害してきたからだ。その妨害の手つきも本書に詳しく述べられている。著者は自慢げに語ることはないが、こうした妨害のなかでよくきちんと仕事ができたものだと驚く。
 それにしてもひどい。まったく知らなかったわけではないが、北朝鮮はシリアのアサド政権による兵器製造開発にも深く関わっていた。北朝鮮はシリアの虐殺の「共犯者と言って差し支えない」と本書は語るが、事実はそれ以外を意味しない。これに北朝鮮が形成した中国でのネットワークが関与している。それでも中露両国は国連捜査の妨害をする。
 本書を読んで、絶句したのは台湾の関与である。日本では、中国への嫌悪感や対抗意識から台湾を賞賛する空気のようなものがあるが、北朝鮮の暗躍には台湾が大きな拠点になっていた。本書では「台湾というブラックホール」と称しているが、中国と台湾の関係が微妙であることから国連としては、台湾はアンタッチャブルになる。そこに北朝鮮はまんまとつけこんで暗躍拠点としていた。似たような状況がマレーシアである。金正男暗殺事件でもマレーシアと北朝鮮の関係がうかがい知れたが、マレーシアには北朝鮮利権のようなものがありそうだ。
 他国ばかりではない。日本社会のなかにも北朝鮮の暗躍ネットワークがあり、日本人もそれに関連している。単に「関連している」にとどまらないほどの指令拠点になっている。日本政府は何をしていたのだろうかと改めて疑問に思える。が、その一端として霞が関の鈍感さについても書かれている。それと明示はしてないものの、その他の日本での暗躍が察せされる部分もある。なにもかもがひどい。
 本書を読みながら、これでもかこれでもかというほどの北朝鮮の暗躍の実態を知ると、まさに国連制裁が現実には機能していないことがわかるし、だからこそ、北朝鮮は国際社会から孤立しているとされながら、原爆やミサイル開発ができたこともわかる。
 「おわりに」では、著者が国連活動で得た情報をもとに、日本国内での北朝鮮制裁漏れについて、首相官邸で安倍政権高官と対談する挿話がある。高官は事態を理解したものの、その後の対応が気になるところだ。

 残念ながら、その後、安倍政権は、大阪市の学校法人森友学園による国の補助金不正受給事件や、政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人による獣医学部新設計画をめぐる問題などへの対応に追われることとなった。山本議員が継続して働きかけてくれたが、官邸はそれどころではない様子だった――

 モリカケ問題が重要だという人がいるのはわかるが、それで官邸のリソースが削がれていく状況を知ると、なんとかならないものかとしみじみ思う。
 ここで本書の結語を引用したい気持ちなる。が、あえて避けたい。そこだけ読んで、本書に込められた悲願とでもいうものが矮小化されてはならない。450ページを超える大著。延々と続く迷路のような北朝鮮の暗躍を読み、へとへとになるこの読書の体験こそ、本書の価値であろう。安易な怒りや、安易なスローガンでまとめてはいけないものだ。下っ腹にいっぱつどすんとくらうくらい、この本を読んで落ち込まなければ、問題の重要性はたぶん伝わらない。

カテゴリー:Diary

アメリカの軍事力行使2017年12月22日

アメリカの軍事力行使になる可能性は

島田 今最大の関心事はアメリカが北朝鮮に軍事力を行使するかの問題です。はっ
きり言って、交渉で拉致被害者を取り戻すことには何の展望もない中で、アメリ
カの軍事力行使によって金正恩政権がつぶされる。これは拉致被害者にもリスク
があるし、劇薬ではあるけれども、しかしヒットラーを攻撃してアウシュビッツ
を解放したのは悪かったという立場に立たない限り、北朝鮮に対する軍事力行使
が悪いとは言い切れない。

 今日のニュースでは、トランプ大統領と一番仲のいいリンゼー・グラム上院議
員が、北朝鮮が次に核実験をした場合には、アメリカが軍事攻撃する確率が70
%あると。そういうことを大統領と話したと報じられました。

 もう一つ、最近トランプ氏の首席戦略官であるスティーブン・バノン氏がNHK
のインタビューに応じています。かなり長いインタビューで全文がNHKのホーム
ページに英語版が載っています。

 私も全部読みましたが、その中でバノンが非常に興味深いことを言っています。
「自分はトランプと身近に接してきて、彼はバン、バン、バンと問題を片づける。
彼は賛否両論があっても、ある問題にいつまでもつきまとわれていることに我慢
ができない。現在北朝鮮問題が彼の中で最も優先度の高いことの一つだ」と。

 そこでアメリカの軍事力行使になる可能性は、どういう状況でどのくらいだと
思いますか。

◆今後北朝鮮への軍事攻撃もあり得る

古森 簡単に申し上げますと、まず第一にトランプ大統領自身が軍事力を必ず使
うなんてことは決めていない。むしろ軍事的手段ではない方法で、なんとかして
北朝鮮に核兵器開発をやめさせることが望ましい。そのために非軍事の手段があ
ると、この瞬間も思っていることは客観的な状況から言えると思います。

 しかし、第2にオバマ政権時代と違って、軍事的手段もオプションとして必ず
あるんだということも間違いないわけです。軍部は当然、いつでも攻撃できるよ
うな態勢を固めているわけですから軍事的手段も考えられる。

 3番目に、アメリカ国民はどう思っているかというと、北朝鮮を軍事的に攻撃
しては絶対いけないといういう人は世論調査では意外に少なくて、顕著なのは、
トランプを支持して、トランプに投票した保守層は、北朝鮮に対して軍事攻撃を
かけてもいいというのが60%から70%くらいいるんですね。これは一つのイ
ンセンティブになる。

 4番目には、軍事的手段を使ってはいけないという最大の根拠は、これは有力
な根拠ですが、韓国側にあまりにも多くの犠牲者が出る。戦闘第一日目でどれだ
けの犠牲者が出るかについて色々な数字が出されています。これが大きな抑制要
因であることは間違いない。

 しかし最近、特に11月29日に北朝鮮が最後のICBMと思われるようなミサ
ルを発射した後に出てきている議論は、ティラーソン国務長官やマティス国防長
官を含めて、軍事攻撃で核・ミサイルの拠点を攻撃し、破壊したとしても必ずし
も全面戦争にはならないだろうという意見、これは少数意見ですが出てきていま
す。

 CIAのポンペオ長官は、「北朝鮮の現場を動かしているのは40人か50人く
らいで直接コミュニケーションする手段がある。こういう人たちに対して、もし
全面戦争になれば国家が滅亡してしまうことを伝えれば、限定攻撃を受けても全
面攻撃に出ることはないのではないか」。そういう情報まで出されている。

 だから一触即発で軍事攻撃というのは、今のところない段階だけど、今後あり
得るということですね。

カテゴリー:Diary

日本という国にゆがみ、弱みがある2017年12月21日

古森義久(ジャーナリスト、麗澤大学特別教授)

 北朝鮮に拉致されたままの同朋の悲劇、その帰りを待ちわびておられるご家族
の方々の苦しみ、これが国際的に今ほど幅広く認知されるようになったのは初め
てだと思います。40年間で最も国際的な関心、国際的な論議が高まった時期だ
と思います。

 特にわが同盟国であるアメリカ、北朝鮮が最も気にかける国であるアメリカで
の日本人拉致事件に関する認識も、これまでになく最も高まった。しかも、同情、
憤慨という言葉で表現できるような反応が明らかになってきた。

 これは核兵器やミサイルへの反応とは違って、アメリカ側での人間の心とか感
情に通じる反響、同情だと言えます。

 しかしその一方、なぜ事件発生から40年も経ってからやっと国際的関心が高
まるようになったのか。この点にこそ、この悲劇の特殊な複雑さが現れていると
思います。

 特に日本にとって、国家的関心事と言っても結果的な関心事であるこの悲劇を、
なぜもっと早く国際的な関心事にできなかったのか。あるいは解決することがで
きなかったのか。こういう点にも、日本という国のゆがみとか弱みというものが、
ある部分証明されているように思われるわけです。

◆いつの時代でも、アメリカの動向が北朝鮮にとって重みを持つ

 私自身は、ワシントン収財の記者として、日本人拉致事件に対するアメリカの
反応に触れるようになってからもう20年くらい経ちます。報道で取り組むよう
になった。

 しかし、本格的できごとは今から16年前、2001年2月、拉致被害者の家
族の方々が初めて訪米された時のことです。その中には横田さんご夫妻とか、蓮
池さんのお父さん等もおられました。

 その人たちが、アメリカで登場したばかりのジョージ.W.ブッシュ政権の要
人や専門家と一連の会談をした。それを終えての総括の集いに私も招かれました。
今でも覚えていますけど、非常に寒いワシントンの夜でしたが、皆様の様子を見
ると、一種の安堵とか希望を感じておられるように思いました。

 これはアメリカ側の反応が思ったより前向きだった。当時の日本では、日本人
の悲劇に対して官民の反応や認知が遅かった。まだ北朝鮮が日本人を拉致していっ
たと言うだけでも、「この人は何を言っているんだよ」という反発が来るような
長い冬の時代からまだ抜けていなかった。ところがアメリカではもう少し前向き
な反応があって、トンネルの先に明かりが見えたような感じを得られたと思いま
す。

 もちろん日本人拉致事件いうのは、日本にとっての問題で、あくまで日本自身
が解決すべき、国民的、国家的な課題です。しかし、アメリカがどう動くかとい
うことがやはり重要なんですね。

 その例証の一つとしては、訪米の一年後にブッシュ大統領が、年頭の一般教書
を発表した。この時に「悪の枢軸」という言葉を使って、北朝鮮が犯罪国家であ
る、無法国家であるということをはっきりと語ったんです。

 そして当時の金正日総書記が、アメリカにそこまで糾弾、非難されるのであれ
ば、日本との融和を求めた方がいいという判断を下して、拉致被害者5人の帰国
を認めることになった。この因果関係は国際的にほぼ認知されていることだと思
います。

 ですからいつの時代でも、アメリカの動向が北朝鮮にとって巨大な重みを持つ
ということです。そのアメリカは、ブッシュ大統領が2006年4月に、横田早
紀江さん、拓也さんをホワイトハウスに招いて直接話を聞くという所までいっ
くれた。

 その後長い間ブッシュ大統領の任期いっぱい、誰も質問もしていないのに、
「拉致された日本人の母親に会って私は非常に感動を受けた」と。大統領がこん
なに感情的になるのかというくらい何度も、何度も語ったというできごとが残っ
ています。

◆かつてないトランプ政権の前向きな対応

 こういうアメリカの前向きな対応を総括してみても、今この瞬間のトランプ政
権の対応というのは、やはり前例がないほど前向きで積極的であると言えると思
います。

 これは国連でのトランプさんの演説、「13歳のやさしい日本人少女」という、
「スウィート」という言葉を使いましたね。横田めぐみさんを表するのに。そこ
から広がって、北朝鮮をテロ支援国に再指定した。

 こういうトランプ政権の前向きな状況を作り出した主要な原因の一つは、9月
11日に日本からの訪米団、家族会、救う会、拉致議連の代表の方々がホワイト
ハウスに行って、トランプ大統領の側近であるマット・ポッティンジャーという
国家安全保障担当のアジア部長に会って、直接にアピールをした。拓也さんが色
々なことを語りかけた。

 私もその辺の記録は細かく拝見していますが、「トランプさんにも愛する娘さ
んがいるでしょう。人間が娘を奪われた時の悲しみがどんなものか」、というこ
とから始まって、「是非ともトランプ政権がこの問題を正面から取り上げて」と
いうことを訴えた。

 ポッティンジャーという人はアメリカの海兵隊出身の人で、「海兵隊というの
はどんな戦いでも自分たちの仲間を後ろに置いて逃げるようなことはしないんだ」
というようなことを強調するくらいの前向きな発言をして、「トランプ大統領に
必ずこのことを伝える」と言った。

 これが大きかったんですね。もちろんポッティンジャーという人は、「トラン
プさん自身が、安倍晋三首相から事件についてはよく聞いているから、だいたい
のことは知っているんだ」とはっきりおっしゃっていました。そういうことが展
開した。

◆アメリカ人拉致も日本人拉致を重視するようになった要因

 そしてトランプ政権全体として、日本人拉致を政策として重視するようになっ
た。これにはあと2つの要因があります。

 一つは、アメリカ人の26歳の青年でオットー・ウォームビアさんが北朝鮮を
訪問して、ホテルにあったポスターを盗んだという理由で懲役刑を宣告され、ずっ
と捕まっていた。そして非常に身体が弱くなった時に北朝鮮が帰してきた。

 その返す時の方法が非常に残酷で、脳に決定的な障害があって、意識不明で瀕
しの状態にあった。それを返してきたが、1週間くらいで死んでしまった。これ
はいかにもアメリカ人の青年だという明るい感じで、元気な時があったというこ
とが分かるんです。

 この時の北朝鮮の説明が、「ウォームビア氏が自分でボツリヌス菌というウイ
ルスにかかってこういう状態になったんだ」と。ところがアメリカで検査してみ
たところ、全くそういう見解は出てこなかった。

 ここからですね、そういえば日本人拉致問題というのもあって、横田めぐみさ
んその他の被害者の遺骨だと称するものが北朝鮮から返されてきたけども、日本
側のDNAの鑑定で全く偽物だと分かった。このこととウォームビア氏に対する扱
い、特に事故に対する説明が似てるじゃないかということで、日本人拉致問題が
マスコミでプレイアップされるようになった。

 もう一つ、2004年に中国の雲南省で行方不明になったアメリカ人青年、こ
れはデイヴィッド・スネドンという人物ですが、これがどうも北朝鮮の工作員に
拉致されて、今平壌にいるらしい。それを裏付ける状況証拠がいくつもあって、
その情報を掘り出すために、西岡さん等は調査をしてアメリカ側に渡し、あるい
は、前から古屋圭議員が行って、この問題は日米共通で被害を受けているんだと
いうことを訴え、アメリカ議会での動きになっていったんですね。

 特に、トランプ政権と同じ共和党の人たちが動いてくれたということで、北朝
鮮の人権弾圧ということをトランプ政権、あるいはトランプさんの頭脳の中にイ
ンプットしていく大きな効果があった。

 ウォームビア事件、そしてスネドン事件は、アメリカ政府としても北朝鮮の人
権弾圧を、核・ミサイルと並列的に並べて、政策の大きな柱にして追及していか
なければならない。こういう状況だと思います。

 その中には、日本人拉致事件も入っていたということで、そういう展開があり
ました。そして今の北朝鮮の状況を見ると、核・ミサイル問題で、かつてない朝
鮮半島の危機が高まって、アメリカと北朝鮮の間で戦争が起きても不思議ではな
い。

◆日本は今までの外交交渉ではだめ

 あるいは北朝鮮が、その他の理由で政権の崩壊という不測の事態を招くような
状況も、ひしひしと現実の展望として迫っている状況があるわけです。

 こういう中で日本は拉致問題をどう新たに取り組んでいくべきかは、当然大き
な課題です。アメリカの場合を見ても、アメリカ人が命を左右されるような人道
問題、アメリカ人の運命がかかっているような時には、やはり他の外交とか安全
保障と切り離してそれを別に追及していくというのは、かなり確立したパターン
になっています。

 ウォームビア青年をアメリカに取り戻すという時も、実はアメリカの特使が色
々な形で行って、核・ミサイルとは別に交渉をしていたことがあったんです。で
すから、ここで何度も繰り返さなければならないのは、日本人拉致問題というの
は、日本が行動をとって解決するしかないのです。

 この日本の行動を見ると、先ほど日本のゆがみとか弱みについて言いましたが、
拉致事件は明らかに犯罪事件です。犯罪事件は一般の社会や国家の中で起きた場
合は、当然犯罪の取り締まりです。逮捕して起訴する、あるいは取り調べる犯罪
です。

 ところが不幸にして、この拉致事件の場合は、外交交渉でしか応じてきていな
いんですね。秘密のうちに、我々の知らないところでそうではない手段がとられ
ているのかもしれないけれど、少なくとも我々が感知するところでは、外交でし
か応じていない。ここにどうしても限界が出てくる。

 拉致事件は、残された時間というのは限られています。今日本が独自の行動を
とる上での国際的な環境というのは、これほど熟していることはなかったんです
ね。日本がかなりなことをやったとしても、国際的にそれを支持してくれるとい
う条件が必要です。特に同盟国のアメリカ、超大国であり、軍事大国であるアメ
リカが日本の行動を徹底して支援してくれるだろうという段階にある。

 こういう時に、今の北朝鮮情勢の危機、残された時間の限度を考えると、やは
り私自身がこの問題を追っていて思うのは、今までのやり方では全くだめで、北
朝鮮を何とか動かす。それには北朝鮮が最も痛いと思うことをする。あるいは逆
に、北朝鮮が最も欲しいと思っていることを提供する。両極端でいればこうなん
ですが、それをパッケージとしてアプローチしていく上で、大事なのは外交交渉
のスタイルではできないんじゃないかということです。

 秘密交渉もあるでしょうし、あるいは力の行使もあると思います。アメリカの
例や他の例を見ていても、自分の国の大事な国民が他の国に拉致され、あるいは
別の犯罪集団に拉致されて命が危ないという時には、まず力を使ってそれを解決
することを当然考えるわけです。

 ですから、日本の場合は、例えば金正恩政権が崩壊したらどうなるのか、拉致
されている人の運命はどうなってしまうのか、こういう研究は残念なことに日本
ではなされず、アメリカで行われている。

◆アメリカは北朝鮮崩壊、拉致被害者への対応を研究している

 国防大学の安全保障研究所が数回に渡って、北朝鮮が崩壊した時のアメリカの
対応から始まり、では日本はどう対応するかまでを研究し、その場合に日本人の
拉致被害者をどうすればいいのかということまで、かなり具体的なことを論じて
いるわけです。

 そうすると、これは2011年の研究ですが、国防大学の報告書にはっきり銘
記されていますが、「金正恩政権が崩壊して、もしアメリカ軍が入っていった場
合に、日本は間違いなく日本人拉致被害者の救出を米軍に求めるだろう。米軍は
多分その余裕がないと断るかもしれない。断った場合の日本側の反発は大変なも
のがあるだろう。だからこれに対して、こういうことまで考えておかなければい
けない」というようなことを、2011年、今から6年も前に極めて明確な形で
触れているんですね。

◆「超法規」でテロリストを解放したのに、「超法規」で救出はしない

 日本ではこういうことが発想としても浮かび得ない。例えば自衛隊が、拉致被
害者が生命を奪われる危険に歴然として直面している時に、普通だったら救出に
行きますよ。それが日本の場合は行かない。もちろん行っても無駄だとか、行く
だけの条件がないとか、実務的な要素がたくさんあるけれど、絶対そういうこと
はしてはいけないことになっている。

 ずっと遡っていくと、戦ってはいけないんですね。愛するものを守るためにも、
戦ってはいけない。戦うことは憲法9条で禁止されているということまで言って
しまう。

 いまさらこんなことをここで言っても意味がないとおっしゃる方が多いかもし
れませんが、結局拉致問題がこれだけ長く伸びて、残念ながらこれだけ国際環境
がよくなってきているのに、今日本が独自で解決しようという兆しが全くない。

 みんながおっしゃるのは「国際社会との連帯」、「アメリカとの協力」、「国
連の制裁」です。ではわが日本はどうするのかというと、沈黙してしまうという
状況です。ですから、日本が戦後選んできた国のあり方というのはこわれている。
そのままの枠組みでは解決する見通しは立たない。

 もう一歩具体的なことを言いますと、私は政府に恨みも何もないですから自由
なことを言えますが、何かの形で、日本の部隊が日本人たちを救う会ために動く
んだということを考えて、準備をしなければいけない(拍手)。

 「超法規」という言葉がありますよね。テロリストに脅されて、テロリストと
して日本の刑務所で服役している人間をどんどん解放した「超法規」があるんで
す。正反対にあるような「超法規」があって、日本人の被害者をいざという時に
は救出する「超法規」も我々は考えているんだというような、そのくらいの発想
はあって然るべきだと思います(拍手)。

 アメリカの状況やわが国の状況を見ていると、すごく思うわけです。アメリカ
での状況は、日本が普通であれば、力の行使も含めて日本が日本人の命を救うこ
とを考えるだろう、するだろうというところから始まって、でも考えるとそれは
できないようだなとなる。じゃあどうしようとアメリカもとまどってしまうとこ
ろがある。

 ですから出発点に戻っての発想の転換で、そして今目の前にある国際的な変化、
これまでにないよい状況というのをなんとか活用していきたい。そんなことで私
の報告とさせていただきます。ありがとうございました(拍手)。

◆「国際法上は自衛隊が救出にいけるが憲法上行けない」と答弁

島田 古森さんが最後に提起された問題について若干補足すると、北朝鮮が混乱
自体に陥った場合に拉致被害者を自衛隊が救出に行けるかどうかということです
が、政府の過去の国会答弁では、「国際法による問題なんだ」と。「当該国がそ
こにいる外国人を保護する意志や能力がない場合、その国の軍隊が出て行って救
出することは国際法上何ら問題はない」。「だけど日本は憲法がそれを禁じてい
るから行けない」。

 こういう解釈をとっているわけです。「拉致被害者救出が最重要課題」と言い
ながら、「国際法上も自衛隊が助けに行ける」と言っていながら、「憲法上でき
ない」と。こういう解釈を未だに続けている。

 2年目の安保法制ではいくつかの点で政府は憲法解釈を変えたわけですが、な
ぜこの点の憲法解釈を変えないのかと私は思っています。

 西岡さんの提出ペーパーの最後のページには、「日本はあまりにものんき過ぎ
る」という言葉が書いてあります。日本はこういう切迫した状況の中で、何をし
べきなのかということを西岡さんからお願いします。

カテゴリー:Diary

中国南方の方言と日本語に共通する発音2017年12月18日

中国南方の方言と日本語に共通する発音

2017年12月09日 06:00
 

「日中文化コミュニケーション」の授業で、地元・汕頭(スワトウ)出身の英語学科女子学生が興味深い研究発表をした。研究課題は広義の文化に関することであれば何でも認めているので、彼女は自分が使っている方言の由来と日本語の共通点をテーマにした。

習近平は「中華民族の偉大な復興」をスローガンに掲げ、その柱の一つとして「伝統文化の継承」を強調する。孔子や孟子、老荘思想までがしばしば引用されるが、身近な生活文化は軽視されている。かつて迷信、封建思想として破壊した伝統文化の復権は容易でない。国家が強くなると個人が弱くなる、の典型だ。

だから若者たちは、自分が育った環境に残る、あるいは捨てられた、文化に対し非常に鈍感だ。伝統的な祝日も復活したばかりで、詳しい由来を知らない。通過儀礼も廃れ、成人式は形骸化している。身近な生活の中で伝統を実感する経験が欠ける一方、これは日本にも共通しているが、バレンタインやクリスマスにはわけもわからず商業PRに乗せられ、プレゼントに熱中する。

授業では私が日本の祝祭日や通過儀礼、伝統儀式を紹介したり、学生たちが自主的に調べたりする中でしばしば、それらがとどめる中国の起源にぶつかり、逆に中国の伝統を再認識する「文化の循環」を体験する。それが授業の主要な意義にもなっている。

彼女が行った研究は『潮汕語の中の古文』。福建省に接する広東省潮州・汕頭市、潮汕地区で話される潮汕語は、広東語とは異なり、福建の閩南語系に属する特殊な方言だ。共通語の声調は四通りだが、潮汕語には八声ある。中原から南方に流れ着いた人々の一部は福建に定住し、その後、そこから潮汕に移り住む者たちが出た。だから福建の名残を残している。潮汕語を調べれば、古代中国語の痕跡を見出すことができる、というのが彼女の研究だ。

同様の研究は多くあるが、彼女は第二外国語に日本語を選択していて、潮汕語と日本語の類似点に言及した点でユニークだ。彼女は日本語を学びながら、自分の話す方言と似た発音が多数あるのに気付いた。彼女が列挙したのは、以下の例だ。

料理(リョウリ)
独身(ドクシン)
準備(ジュンビ)
新聞社(シンブンシャ)
運動(ウンドウ)
失敗(シッパイ)
注意(チュウイ)
安心(アンシン)
注射(チュウシャ)
自由(ジユウ)
先生(センセイ)
優秀(ユウシュウ)
何処(ドコ)

教室では、私が日本語で、続いて彼女が方言で発音してみたが、一語一語にみなが「オー」と声を上げるほど、確かにそっくりだった。

ほかにもある。共通語で「走」は「歩く」の意味だが、潮汕語では日本語と同じ「走る」の意味を残している。共通語では「米を煮る」だが、潮汕語では日本語と同じ「米を炊く」、日本語の「新郎新婦」は中国語では「新郎新娘」だが、潮汕語では嫁をいまだに「新婦」と呼ぶ。おそらく深く調べれば、もっと見つかるに違いない。

文化は伝播した辺境の地において、しばしば原型をとどめる。山や海に囲まれ、外部との交通が遮断されていれば、原型の濃度はそれだけ高まることになる。一方、文化の中心はひっきりなしに他民族が出入りし、異文化の影響を受けるので、絶えず変化を強いられる。

柳田国男が『蝸牛考』で説いた方言周圏論を援用することもできる。柳田国男は、京都を中心に、蝸牛=カタツムリの名称がデデムシ、マイマイと同心円状ごとに共通し、しかも、呼び方が中心より離れているほど古いことを発見した。つまり中心から周辺に伝播し、外縁にこそ古い原型が残っているのである。潮汕語と日本語の発音の酷似は、まさにこの説を裏書きするものだ。

中国古代の漢字の発音が、一つは山を越えて南方に行き止まり、一つは海を隔てて島国に流れ着き、その二つが数千年を経て出会った、と考えればワクワクしてくる。大学の教室で、時空を超えた出会いに驚きを感じた瞬間だった。

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NHKの受信料制度は合憲だが時代遅れ2017年12月7日

 
2017年12月06日 22:30

NHKが受信料をめぐって視聴者に対して起こしていた訴訟の初の憲法判断として注目されていた最高裁判決は、双方の上告棄却という形で終わった。これを「合憲判決」と考えることは法的には間違っていないが、NHKの敗訴という面もある。判決要旨によると、最高裁はこう述べている。

放送法は、受信料の支払義務を、受信設備を設置することのみによって発生させたり、NHKから受信設備設置者への一方的な申込みによって発生させたりするのではなく、受信契約の締結(NHKと受信設備設置者との間の合意)によって発生させることとしたものであることは明らかといえる。

これは契約自由の原則という近代社会の根本原則である。誰かがあなたに「年額1万3000円振り込め」といって請求書を送ってきても、あなたが同意しないと契約は成立しないのだ。では具体的に、どの段階で契約が成立するか。この点について最高裁は、二審の東京高裁判決を支持している。

放送法64条1項は、受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり、NHKからの受信契約申込みに対し受信設備設置者が承諾をしない場合には、NHKがその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当である。

NHKは一貫して「承諾の有無に関係なくNHKが契約を申し込んだ時点で契約が成立する」と主張しているが、最高裁はこれを斥けた。これはNHKにとっては高いハードルだ。年額1万3000円を取り立てるために訴訟を起こすことは、費用対効果が見合わない。「民事訴訟を起こすぞ」なんて何の脅しにもならないのだ。

「受信料を税金と一緒に税務署が徴収しろ」という意見もあるが、これはNHKを国営放送にしろということだ。それでは政府の発表を一方的に流すことを義務づけられるので、先進国に国営放送はなく、独自の財源を工夫している。

NHKの受信料もそういう工夫の一つで、BBCの受信ライセンス料に近いが、違うのは受信料の不払いには罰則がないことだ。これも何度か改正の動きがあったが、「NHK国営化だ」という野党の反対で見送られた。そういう経緯を知らない人は「国営化しろ」というが、たとえば共産党政権になったら共産主義を礼讃する番組しか認められない。

このややこしい問題の答は簡単だ。NHKの電波にスクランブルをかけ、受信料を払った人しか見られない有料放送にすればいいのだ。BS受像機ではB-CASカードでそれをやっているので、地上波にもやればいい。インターネットやスマホでは「NHKアプリ」をつくってアクセス制限をかければいい。

こういう改革の最大の障害はNHKではなく、民放連である。NHKを有料放送にして民営化すると、彼らにとって大きな脅威が出現する。NHKがCNNのような24時間ニュースになると、くだらない民放の報道番組を見る人はいなくなるだろう。だが新聞も電波はタブーなので、まともに論じない。それがこの簡単な問題が難航してきた原因だ。

NHKは今まで政治のおもちゃになってきたが、インターネット時代にはそんなことはどうでもいい。受信料制度を廃止してNHKの「ソフトパワー」を解放すれば、世界に情報発信することも可能になる。大事なのは「国策放送」か「偏向報道」かという昔ながらの議論ではなく、NHKをテレビという枠から解放することだ。

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北朝鮮の弾道ミサイル発射が引き金引くアジア危機 韓国、台湾は暗黙の核保有国へ、日本は徴兵制もやむなし 2017.12.4(月) 矢野 義昭2017年12月7日

2017.12.4(月) 矢野 義昭
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51741

北朝鮮が11月29日、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射試験を再開した。中国の特使派遣も成果がなく、今冬にも朝鮮半島情勢は危機を迎えるであろう。台湾海峡の軍事バランスも大陸優位に傾いている。

 日本はこれから危機の時代に突入する。

 短期の北朝鮮の核ミサイル問題、中期の朝鮮半島と台湾海峡の動乱、長期の軍事大国中国の台頭と統一朝鮮の出現といった脅威が、今後数十年にわたり連鎖的に生起するであろう。日本には長期的視野に立った防衛戦略が求められている。

1 短期の脅威: 北朝鮮の核ミサイル問題

1.1 北朝鮮の能力と脅威の度

 北朝鮮の保有するミサイル発射機数はミサイル数、休戦ライン沿いの砲弾・ロケット弾については、米国防省は2012年時点で、発射用ランチャー数は、日本を狙うノドン級で50基以下、射程が3200キロ程度のムスダン級で50基以下、改良型スカッドその他で計100基以下とみている。

 またミサイル数については、米国の北朝鮮分析専門機関のウェブサイト「38ノース」の見積りによれば、ノドン級が200~300発以上、スカッド級が500~600発以上、その他を合わせ、すでに約1000発は保有しているとみられている。

 各発射ランチャーから同時連続的に50発から100発程度を北朝鮮の各所、一部は海から発射してくれば、日米韓のミサイル防衛システムでは全数撃破はできず、打ち漏らしが出てくると予想される。

1.2 中露の対応と外交と経済制裁の限界

 中国の戦略的利益は米韓軍との地上接触阻止、難民の流入と国内混乱防止にあり、北朝鮮の核保有はそれ以下の脅威でしかないとみられる。中国は通常戦力のみでも北朝鮮を占領支配できる。

 ロシアのウラジーミル・プーチン政権にとっては、ウクライナ東部の支配と経済制裁解除、次いでシリアのアサド政権維持が最大の戦略的課題であり、そのため米軍をアジアで拘束するのが利益となる。

 そのためロシアは2013年頃から北朝鮮に対する軍事支援に乗り出した。

 中露の協力なしには経済制裁の効果は上がらない。中国の影響力にも限界があり、今年10月のドナルド・トランプ大統領の北京訪問時の米中首脳会談後、習近平国家主席から平壌に特使が派遣されたが、核・ミサイル開発問題では進展はなかった。

1.3 米国の採り得る軍事的、準軍事的選択肢とその可能性

 核使用局地戦、通常戦力局地戦、核とミサイル・休戦ライン沿い火力の制圧、ソフトキル、情報戦主の斬首作戦などが考えられるが、可能なのは斬首作戦のみであろう。

 なぜなら、他の軍事的選択肢では北朝鮮による日本や韓国に対する核・化学ミサイルによる反撃のおそれが大きいためである。地下に隠された移動式のミサイルを発射前に発見し制圧するのは、米軍でも極めて困難とみられる。

1.4 今冬が軍事・準軍事行動の最後の機会

 その理由として、以下の点が挙げられる。

(1)来春にはICBM完成のおそれがあるため、完成前に破壊する必要がある。
(2)経済制裁の効果が出るには今冬まで待つ必要がある。
(3)冬季は荒天が多く、北朝鮮側の弾道ミサイル発射が制約を受ける。

(4)情報収集上は、積雪時の屋根の融雪、車の轍跡などから活動状況を把握しやすい。
(5)中国は党大会から間がなく、露は来年3月に大統領選挙を控えており、中露の対応力に制約がある。

 もし、米国が今冬に行動に出て北朝鮮の核・ミサイル能力を奪うことができなければ、北朝鮮の核保有は実質黙認に至る可能性が大きい。

 そうなれば、金正恩は、来年の「新年の辞」などでICBMの完成を公式に宣言し、米国と国際社会に北朝鮮を核保有国として認めることを条件に交渉を呼びかけることになるであろう。

 交渉では、米韓軍事演習の中止、在韓米軍の撤退、米韓条約破棄、米朝平和条約締結などが提案されるとみられる。

 韓国には核恫喝も交えつつ政治的な平和統一が提唱され、文在寅(ムンジェイン)政権に南北統一の大統領選挙などの呼びかけなどがされるかもしれない。

 このようなプロセスが実現すれば、金日成が失敗した北主導の朝鮮半島の統一が達成されることになる。

2 中期の脅威

2.1 朝鮮半島の動乱

・北が核保有し黙認された場合次のシナリオが予想される。

(1)韓国は北の核恫喝に屈し北主導の半島統一へ
(2)韓国も核保有し半島に局地的な相互核抑止態勢が成立
(3)(1)(2)いずれでも在韓米軍は撤退

 韓国が核保有せず北朝鮮の核保有が事実上黙認されるとすれば、米国の韓国に対する核の傘の信頼性は半ば失われることになる。韓国の指導層も国民も動揺し、米国は当てにできないとみて、北朝鮮の核恫喝に屈する恐れが高まる。

 韓国が北朝鮮の恫喝に屈することを拒否し、自由と独立を守るため自衛目的の核保有に踏み切ることも考えられる。その場合韓国は、NPTから脱退することが必要となり、米中露などの核保有国から阻止の圧力がかかると予想される。

 米国は、北朝鮮に対する核抑止力の局地的均衡回復と、紛争を抑止し自国の直接軍事介入のおそれをなくするため、韓国の核保有を黙認するかもしれない。

 その場合は、NPT態勢維持のため、韓国の核保有が公にならない範囲にとどめる可能性が高い。能力があるともないとも明言しないイスラエル型の保有になる可能性がある。

 中露は韓国の核保有の動きを警戒するとみられるが、朝鮮半島内の局地的な相互核抑止態勢の維持は、他の大国の干渉と南北間の武力紛争を抑止するという観点から、米国と協議のうえ在韓米軍撤退を条件に黙認する可能性がある。

 韓国国内世論では過半数が核保有に賛成であり、韓国には投射手段も含め核戦力保有の潜在能力もある。

 ドナルド・トランプ大統領の訪韓時には、韓国が開発する弾道ミサイルの弾頭重量の制限が撤廃されることになり、韓国は弾頭重量が2トン以上の「怪物」弾道ミサイルの開発を開始することになった。

 韓国は既に国産の大型潜水艦の開発を進め、巡航ミサイルを搭載しているが、2020年頃にはこれに国産の弾道ミサイルを搭載することを目指している。

 韓国がプルトニウム抽出技術を持っていることは明らかであり、原発大国でもあり、核弾頭製造の潜在能力も高い。

 ただし韓国が核保有に至った場合、ナショナリズムが過度に燃え上がり、在韓米軍撤退から反日米、半島統一に走り北の独裁体制に取り込まれるおそれもある。

 逆に過度なナショナリズムに走らず、安定した政治が続き、日米との良好な関係が維持されれば、長期的には、韓国の自由で開かれた社会と経済の優位性を生かし、北朝鮮を変質させ韓国主導の統一が可能になるであろう。

 

北の核保有能力が力で奪われる場合は次のようなシナリオが考えられる。

(1)中露が介入し北を米韓と分割占領
(2)米韓軍が北上し大半を占領、中朝国境に緩衝地帯を創る
(3)米韓は北の一時占領後撤退、北の体制は温存

 米韓軍が休戦ラインを超えて北上した場合、北の体制崩壊に至る前に中露は介入する可能性が高い。しかし両国とも米軍との直接の戦闘は核戦争にエスカレートする恐れがあり、あくまで回避しようとするであろう。

 北朝鮮の核弾頭、核関連施設、弾道ミサイル、化学兵器などの接収も米中露の共通した狙いであろう。

 これらの必要から、米国と中露は米軍が行動するに先立ち、何らかの占領地域や接収責任区域などについて協議し了解に達している可能性が高い。米中、米露首脳会談でも重要議題になっているであろう。結果的に北朝鮮は分割占領されることになろう。

 その場合も、米韓の力の行使が迅速かつ圧倒的であれば、中朝国境沿いにわずかの非武装緩衝地帯を残し米韓が半島をほぼ全面占領することになろう。中露は難民の流入阻止のため国境沿いに軍を展開するであろう。

 米国の意図が体制転覆ではなく、北の核・化学・弾道ミサイルなどの能力を奪うことにあれば、一時的に占領しても目的達成後撤退する可能性もある。

 その場合、残された北の指導部は集団指導体制になり、米朝平和条約締結に向けた交渉も始まり、長期には韓国主導の半島統一に動くとみられる。

2.2 台湾海峡の動乱

(1)中国が台湾を政治的経済的に屈服させ平和裏に併合
(2)中国が武力攻撃、米国は間接支援に留まり、台湾は抵抗するも屈服
(3)中国が武力攻撃、米国は軍事力派遣、台湾勝利

 などのシナリオが考えられる。

 今年の『防衛白書』は、次のように述べ、中国の動向に強い警告を発している。

 「中国は、周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での軍事活動を阻害する非対称的な軍事能力(いわゆる「アクセス(接近)阻止/エリア(領域)拒否」(「A2/AD」)能力)の強化のほか、昨今、実戦を意識した統合運用体制の構築などを念頭に、大規模な軍改革に取り組んでいるとみられる」

 「また、中国は、東シナ海や南シナ海をはじめとする海空域などにおいて質・量ともに活動を急速に拡大・活発化させている」

 「特に、海洋における利害が対立する問題をめぐっては、力を背景とした現状変更の試みなど、高圧的とも言える対応を継続させ、自らの一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢を継続的に示している」

 今年10月に開かれた中国共産党第19回全国代表大会での習近平総書記の報告では、大会の主題が「初心を忘れず、使命を深く胸に刻み、中国の特色ある社会主義の大旗を高く掲げ、小康社会を全面的に建設し、新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取り、中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現のために怠りなく奮闘すること」にあると、その冒頭で高らかに宣言している。

 そのための基本戦略として安全保障面では、「総合的な国家安全観の保持」「党の人民軍隊に対する絶対的な指導力の堅持」「”一国両制”の堅持と祖国統一の推進」を掲げている。

特に「二つの百年」という目標の実現が中華民族の偉大な復興戦略のキーとなることを強調している。

 「二つの百年」とは、現在から2020年までの間に小康社会の全面的建設に決定的に勝利し、その後の200年は「社会主義現代化国家の全面的建設」を目指すとしている。

 その中で2020年から2035年の第1段階では、「社会主義の現代化を基本的に実現」する。

 2035年から今世紀中頃までの第2段階では、「社会主義の現代化強国の建設」を目指し、中国を「総合国力と国際的影響力において世界的な指導国家にする」としている。

 これに連動し軍建設については、2020年までに機械化、情報化を大幅に進展させ戦略能力を向上させる。2020年から2035年の間に国防と軍隊の現代化を基本的に実現し、今世紀中ごろには人民軍隊を全面的に世界一流の軍隊にするとしている。

 さらに台湾との両岸政策については、台湾問題を解決し祖国を統一することは中国の人々の共通の願いであるとともに、中華民族の根本的利益がここに存するのであり、中国が「両岸関係」の政治的基礎と位置づけ、「一つの中国」を体現しているとする「92共識」を体現することが、両岸関係の平和的発展の基礎になるとしている。

 「両岸は一家であるとの理念を持ち」、両岸の文化経済交流を拡大し、台湾同胞に「大陸同胞と同じ待遇を与え、精神の一致を促進する」と表明している。

 これは両岸の経済文化交流を通じて台湾国民の大陸への心身両面での同化を進め、その独立心を削ぐことを狙った長期戦略の表明と言える。

 他方では、「我々は国家の主権と領土の完全性を堅固に維持する。国家の分裂という歴史的悲劇を決して繰り返させない」と、台湾併合への意思を鮮明にしている。

 さらに、「我々は堅固な意思と十分な信念をもっており、いかなる形の”台湾の独立”という国家分裂の策謀をも挫く能力を持っている。我々はいかなる者、組織、政党であれ、いついかなる形態であれ、一片の領土たりとも中国から分断させることは決して許さない。」と、台湾独立への動きを決して許さないこと、特に台湾内部はもとより外部からの干渉も一切許さないとの意思を強調している。

台湾国民の若い世代を中心とする独立運動の高まり、それに連動した、米日などの外部勢力による台湾独立支援を強く警戒し封じ込めようとする習近平指導部の強固な意図がうかがわれる。

 中台間の軍事バランスは、今後人民解放軍の現代化に伴いますます大陸優位に傾いていくと予想される。

 米国と台湾の軍事専門家は、両岸の軍事バランスは2020年代の前半には、台湾本島への海空侵攻が可能なレベルにまで台湾側に不利になるとみている。

 台湾は大陸の軍事的威圧の下、経済文化面で平和裏に大陸に同化され独立を失うのか、ある時期にそれに抵抗し大陸からの武力攻撃の危険を冒し独立を求めるのかという岐路に、2030年頃までには立たされることになるとみられる。

 その際の台湾をめぐる米中の軍事バランスにより、米国の対応は基本的に決まってくる。米国が劣勢なら台湾は大陸の侵略に抵抗できず武力併合されることになる。

 米国が中国との軍事衝突のリスクを冒しても、台湾を支援すれば台湾に勝利をもたらし、大陸との全面戦争になることなく介入目的を達成できると判断すれば、介入することになろう。

 中台紛争時には我が国の尖閣諸島、南西諸島にも戦火が拡大するおそれは大きく、日本も軍事面での台湾支援が自国の防衛上も欠かせないものとなろう。

3 長期の脅威

3.1 軍事大国中国の台頭

 上記の今年の党大会での習近平報告、近年の朝鮮半島情勢、台湾情勢などから、以下の趨勢は今後も避けられないとみられる。

 習近平国家主席の長期独裁体制のもと、中国の強大国建設路線と海洋覇権拡大の動きは続く。イデオロギー面での締付け、国内の民主派、少数民族弾圧も経済社会面での共産党の統制・介入も強まる。

 ポスト習近平時代が来ても、共産党独裁体制が続く限り、長期的な中国の軍事力強化と覇権拡大は止まらない。

 中国と米国とのアジア・太平洋での覇権争奪は長期的に激化し、2035年頃までに台湾海峡、朝鮮半島は動乱に巻き込まれる可能性が高まる。その際に日本は米国以上に深刻な安全保障上の危機に陥るであろう。

3.2 中国の将来

(1)民主化運動が激化し共産党独裁崩壊、少数民族独立、軍事脅威消滅、難民発生
(2)中国共産党独裁が続き日台越比などと紛争生起、力の限界、米国の支援、国際的孤立もあり敗北、体制崩壊の引き金に
(3)米軍の介入を抑止できる戦力を整備し、周辺国との紛争に勝利、各個に撃破し西太平洋の覇権確立

 

3.3 統一朝鮮の台頭

 長期的には以下の統一シナリオが考えられる。

・韓国主導での統一:

(1)韓国が自ら対北核抑止力を保有し、日米との友好関係も維持しつつ北と長期に対峙し、優勢な経済力、技術力、自由で開かれた社会の強みを生かし北の内部崩壊を促し、政治統合を果たす場合

(2)(1)と同様だが、ナショナリズムが高まり、日米との関係が悪化する場合

(3)(1)と同様だが、民族問題、領土問題を巡り中国との関係が悪化し紛争に至る場合

・北朝鮮主導での統一:

(1)韓国併合後その経済力、人口、技術力を全面動員し、核ミサイルを持った強大な軍事独裁大国を建設し周辺国を威嚇し覇権拡大へ

(2)覇権拡大が対馬海峡に向かい日本と紛争が起きる場合

(3)覇権拡大が中国に向かい中朝紛争が起きる場合

 韓国が独自の核抑止力を保持し、北の核恫喝に屈することがなければ、韓国は長期的に経済、社会の発展成熟の優位性を生かし、韓国主導の統一ができよう。しかし統一後のナショナリズムをコントロールできなければ、日本や中国と対立する可能性が高まる。

 南北を合わせた軍事力の強大さを考慮すれば、過剰な軍事的自信が対外的な冒険主義や軋轢につながるおそれは否定できない。

 日米中など関係大国との融和外交と適切な規模と能力の軍事力の保有に、統一後の韓国が進路をとるように周辺国が協力して誘導することが望ましい。

 その際に、関係大国が統一韓国の中立を保障し相互に干渉を控えることを保障する政治的外交的な枠組みの構築が必要となろう。

 北主導の統一もあり得るが、大量の難民が発生し、中国、米国、日本などに流入するおそれがある。

 武装難民も含まれる可能性が高く、各国の入国管理態勢強化と国内治安維持、難民受け入れ態勢整備が求められる。難民の保護、輸送、受け入れなどについての国際協力も必要になる。

北が半島を統一すれば、現在の休戦ラインの南北対峙が対馬海峡で再燃することになる。しかも対峙する相手は人口7000万人の独裁体制下の核大国となる。

 今年の『防衛白書』によれば、南北朝鮮の地上兵力は北が102万人、南が49.5万人である。統一朝鮮の地上兵力の規模は縮軍をしても100万人は超え、予備役も少なくとも500~600万人の規模に上るであろう。

 独裁体制下で韓国の先端技術力が全面動員されれば、通常戦力の近代化、情報化も一気に進み、軍需産業の生産能力も質量ともに大幅に向上するとみられる。

 このような軍事大国に日本は第一線で対峙することになることを予期しなければならない。日米同盟が維持されても、日本の防衛態勢は現在の韓国に倍加するレベルに引き上げなければならなくなるであろう。

 統一朝鮮では徴兵制と全面動員態勢が維持強化されるとみられるが、少子化の中その軍事圧力に対抗するには、日本でも徴兵制をとらねばならなくなるであろう。

 韓国主導で統一がされても、日米との関係が悪化し、韓国が武装中立路線をとれば、統一朝鮮ほどにはならないかもしれないが、基本的には同様の対峙状況になる可能性がある。

 いずれにしても、日本と米国、台湾、欧州、豪州、インド、東南アジアなどとの軍事、外交面での協力関係も、今よりもさらに強化しなければならない。

 集団的自衛権の行使の在り方についても、より多くの国との多角的な協力関係を具体化し深化させねばならない。

 中朝が友好関係を維持すれば、日本への軍事的圧力は一層高まることになる。日本は南西正面と対馬海峡の2正面で、厳しい軍事的対峙状況に立たされることになる。

 しかし、中朝間には領土問題、民族問題もあり、対立要因を抱えている。この点に、中朝離間を図る余地があると言えよう。

 ロシアの中立的姿勢を維持するための外交努力も重要になる。極東ロシアの経済開発協力など何らかの妥協も必要になるかもしれない。

4 日本への影響と日本の対応

・短期的:

 米韓と協力し北朝鮮に最大限の圧力を加えて北を弱体化させるとともに、米国の軍事的選択肢にも備えるしかない。特に北のミサイル攻撃に対するミサイル防衛、民間防衛態勢の整備、対特殊部隊攻撃、対サイバーなど非対称戦への備えが重要である。

・中期的:

 台湾防衛への協力が最重要課題である。南西諸島も朝鮮半島も台湾が中国の支配下に入れば防衛は困難になる。日本としても台湾関係法を制定し軍事援助の可能な態勢をとる必要がある。

 日本と体制と価値観を共有する台湾の防衛は、地政学上も歴史的つながりの面でも、米国以上に日本にとり死活的問題である。

 台湾の日本にとっての戦略的価値を踏まえ、台湾の大陸への実質的な吸収、武力統一を阻止するため、軍事面を含めた最大限の支援策を日本はとらねばならない。

 北主導で半島が統一された場合の脅威度を考えれば、ミサイルなどの反撃の脅威はあっても、いま北朝鮮から核能力を奪う方がリスクは少ない。現在は米韓との協力に最大限尽力すべきであろう。

 米国が北の核保有を黙認することになれば、日本は韓国とともに自ら核保有することを米国に認めさせるべきである。

 日韓と北朝鮮三者間の局地的な相互核抑止は、北と韓国の2国間よりも安定する。米国は北の核を黙認しながら日韓に自衛のための核保有を認めないなら、いずれ韓国、さらに日本は共産勢力に組み込まれ西太平洋の覇権を失うか、それを阻止するために大規模な軍事介入を余儀なくされることを覚悟すべきであろう。

 同様に、台頭が予想される軍事大国中国に対しバランスオブパワーを維持するためには、日韓のみならず台湾の核保有も必要となる。ただし台湾の核保有は中国の侵攻の口実になるため、秘密裏に行わねばならない。

 当面は、米国の核の傘の信頼性増大のための具体的な施策と台湾の通常戦力増強近代化が必要である。日本もそれに協力できる態勢をとり、最大限の支援を行うべきであろう。

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米中が金正恩の追放に乗り出した2017年12月7日

2017年12月06日 11:30  長谷川 良

ワシントン発の米共和党のグラム上院議員の発言を読んで、「いよいよ近づいてきたのか」という印象を受けた。同上院議員は3日、CBSの会見の中で、「在韓米軍の家族を韓国国外に退避させるべき時が来た」と訴えたのだ。

▲米韓の合同軍事訓練に投入された米軍最新鋭戦闘機F-35(ウィキぺディアから)

▲米韓の合同軍事訓練に投入された米軍最新鋭戦闘機F-35(ウィキぺディアから)

米軍の対北軍事介入があり得るとすれば、約2万8500人の米軍兵士の家族がその前に韓国から退避しなければならない。換言すれば、軍兵士家族の退避が終了しない限り、米軍は絶対に戦争を始めないからだ。そして今、上院議員が「米軍兵士の家族の退避」を要請したというのだ。同議員の発言源はトランプ大統領府周辺にあることは間違いないだろう。

それでは朝鮮半島で米朝の軍事衝突が勃発する可能性が高まってきたと予想できるのか。中国の習近平国家主席の訪朝特使、同国共産党中央対外連絡部長の訪朝後の北京、平壌、そしてワシントンの対応を時間を追ってフォローしてみた。
以下は中国反体制派メディア「大紀元」の記事(11月29日)を参考にまとめてみた。

①習近平国家主席の特使、宋濤・中国共産党中央対外連絡部長が先月17~20日の日程で訪朝した。名目は10月に開かれた共産党大会の状況報告ということだが、実際は、習近平主席からの“通告”を伝える目的があったはずだ。しかし、特使は金政権でナンバー2の崔竜海・朝鮮労働党副委員長と会談できたが、金正恩氏との会見は実現できずに北京に帰った。

②先月20日、金正恩氏は最側近の黄炳瑞・朝鮮人民軍総政治局長と金元弘・同総政治局第一副局長を処罰したという報道が流れた。「大紀元」によると、「黄炳瑞氏と金元弘氏が金正恩委員長に中国側の説得に応じるよう勧めたことが理由」で、金正恩氏の怒りを買い、処罰されたというわけだ。また、ジンバブエの政権交代劇に中国が影響力を行使し、軍部を蜂起させ、ムガベ政権を打倒したように、中国は北朝鮮でも政権交代を目論んでいる。これを恐れた金正恩氏は軍幹部を処罰した、という憶測情報を報じている。

③中国の特使が帰国した20日、トランプ米大統領は北朝鮮を「テロ支援国家」と再指定した。同時に、北朝鮮の核開発に参与したとみられる中国などの企業13社に対して追加制裁を発表した。

④特使の帰国2日後、中国国際航空は、「需要低迷」を理由に北京―平壌間の航空便を無期限に停止。同時に、中国外交部は24日、遼寧省丹東市と北朝鮮の新義州市を結ぶ「中朝友誼橋」を“修復のため”臨時的に閉鎖すると公表した。「大紀元」によると、同橋を通じて中朝貿易の7割の物流が行われてきた。すなわち、中国当局は北朝鮮に通じる陸・空のルートを閉鎖する対応に乗り出したというわけだ。

⑤北朝鮮は先月29日、同国西部から日本海に向け大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星15」を発射させ、射程距離約1万3000キロで米全土をその射程内に収めたと勝利宣言をした。

以上。①から⑤の動向は一見、密接な関係をもっているように感じる。それとも単なる偶然だろうか。当方は「大紀元」の記事と同様、米朝中3国の指導者の対応には強い関連性があると受け取っている。

ちなみに、金正恩氏は2013年12月13日、叔父の張成沢(当時・国防委員会副委員長)が正恩氏を追放する計画を中国当局と画策していたとして、叔父を射殺すると共に、親中国派の幹部たちを次々と粛清していったが、②の軍幹部の処罰はそのことを想起させる。また、親中派の金正男氏を今年2月、マレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺したことも思いださせる。金正恩氏は中国の支持に動く人物を許さないわけだ。

一方、④は第19回共産党大会(10月18日~24日)で権力を完全に掌握した習近平主席が金正恩氏を追放し、親中派の北朝鮮指導者をトップに立てることを決意した結果ではないか。2期目に入った習近平氏は江沢民派の親北党関係者の影響を受けることがなくなった。

そして今月3日、前述した米上院議員の「在韓米軍兵士の家族の退避要請」発言につながるわけだ。米上院議員の発言を最も深刻に受け取っているのは言うまでもなく金正恩氏だろう。このまま北王朝崩壊の日まで突っ走るか、戦略を変更し、なんらかの妥協を中国側に提示するかの選択肢に迫られている。

なお、米韓両軍は4日から合同軍事訓練「ビジラント・エース」を始めた。金正恩氏には、もはや多くの時間が残されていないのかもしれない。

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トランプ大統領の政権運営の本質は世襲経営者特有の“受け身”スタイル(特別寄稿)2017年11月30日

2017年11月30日 06:10

ホワイトハウスFacebookより:編集部

大統領選挙時から現在までのトランプ大統領の動向から同大統領の政権運営スタイルが明らかになってきました。その主な特徴としては、トランプ大統領は比較的容易な案件は自ら淡々とこなす一方、極めて難易度の高い問題については殆ど自らの意思を示すことはなく、周囲のキーパーソンに実質的に対応を委任してきているということです。

大統領制度という制度上の仕組みとして大統領が議会に対して重要案件について好き勝手にできないことは当然ですが、現在までのトランプ大統領の内政・外交面での手堅い政権運営について、大統領選挙時からトランプ大統領のリーダーシップ(?)で世界が破滅するかのような予測をしていた有識者らは拍子抜けしているのではないでしょうか。

トランプ大統領は難易度が相対的に低い案件については大統領令・大統領覚書を通じて次々と実行してきました。その政策的な実績は積み重なっており、エネルギー業界に代表される個別のセクターに属する関係者への恩恵は大きいものとなっています。

しかし、実際にタフな交渉が必要となる案件、つまりオバマケアの廃止・見直しに関しては、ポール・ライアン下院議長に一任して失敗したあと、再挑戦時にはペンス副大統領・マッコーネル上院院内総務に事実上の丸投げをして再度失敗しています。オバマケアの廃止・見直しなど重要案件は連邦議会(特に共和党内)が分裂状態であることから、事態収拾のためには大統領のリーダーシップが発揮されることを必要とされていましたが、トランプ大統領は最後まで自らイニシアティブを示そうとしているようには見えませんでした。

一方、活発な動きを見せている外交的なイニシアティブについても同様であり、中東版NATO構想や自由で開かれたインド太平洋戦略などは、いずれも従来からの同盟国であるサウジアラビアや日本が主導して推進している枠組みであり、トランプ大統領自らが描いた各地域における戦略展開とは言えないものです。イランや中国に敵対するサウジアラビアや日本に乗っかる形で大風呂敷を拡げて、それらの枠組みに乗ったふりをしながら経済的成果を果実として回収するという形になっています。北朝鮮をめぐる一連の困難な対応も日本側の枠組みを踏まえつつ、中国に北朝鮮への責任ある対応を求め続けてきました。

つまり、内政・外交いずれにおいても重要で難易度が高い案件に関しては、常時パートナーとなり得る人々や国々に任せてみる、というスタンスを取ることがトランプ政権の慣例となっています。オバマ大統領のように自らの責任と能力でできもしないことにコミットしない、という現実的なスタンスだと言えそうです。そして、同案件の遂行に失敗したパートナーについて容赦なく切り捨てることで、自らの政治責任に関するダメージを最小限に抑えつつ、次の話題にテーマを移していくことに長けているように見受けられます。

トランプ大統領の統治スタイルは世襲のオーナー経営者・政治家に良くあるタイプのものであり、トランプ大統領は実質的に一代で巨大企業グループを構築した人物ではあるものの、その父もクイーンズで財を築いた不動産開発業者でした。この手のタイプの人々は自分の周囲には無限に自分を利用しようとする人間が集まってくるため、それらに対して簡単に登用したり切ったりすることを最初から所与のものとして受け入れています。筆者はトランプ大統領も自らの出自、そして長いビジネス経験を通じて同様の経営スタイルが染みついているのではないかと推量します。

したがって、トランプ大統領の本質は「受け身」にあり、今後も周囲の状況を良く観察した上で自らの利益になりそうな側にBETすることを繰り返し、勝負に負けそうになると速やかに撤退してパートナーを更迭する形をとっていくことでしょう。そして、パートナーにBETして彼らの構想に乗っかる形で大言壮語を繰り返しながら、実際にはその中で細かく点数を積み上げていく賢い経営を実施していくことになります。したがって、「トランプ大統領が何をしたいのか分からない・一貫性がない」と頭でっかちな有識者らは論評せざるを得ないことになるわけですが、トランプ大統領は既に自らのやり方でやりたいことを実行していると言えるでしょう。

ポピュリズム批判に常にさらされ続けているトランプ大統領ですが、トランプ大統領自身は冷徹な経営者であり、その任期の中で確実に米国民にとって必要な果実が手元に残されていることになるでしょう。

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アラマバ州上院補欠選挙2017年11月30日

安田佐和子氏のブログより転記

共和党の地盤として知られるアラバマ州で、上院議員補欠選挙が12月12日に行われます。

4期連続、約20年にわたり上院議員を務めた共和党のジェフ・セッションズ氏の司法長官就任に伴う補欠選挙は、米国内で注目こそされ、日本人投資家にはあまり馴染みがありませんよね。しかし、今回は留意しておくべきでしょう。

補欠選挙では、アラバマ州最高裁判所の元判事で共和党候補のロイ・ムーア氏の勝利が有力視されていました。しかし11月9日、ワシントン・ポスト紙の報道によってムーア候補の優勢が崩れます。約40年前に14歳だった女性への“性的嫌がらせ”疑惑が浮上しただけでなく、追加で4人が名乗り出る異常事態に陥ってしまったのです。民主党のダグ・ジョーンズ候補に対する約10ポイント近くのリードは消え、一時は逆転を許す場面も。直近で支持率は回復傾向にあるものの、予断を許さない戦況に変わりありません。

11月28日までの支持率動向。

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(作成:My Big Apple NY)

折しも米国では大物映画プロデューサーをはじめ、性的嫌がらせ問題が次々に発覚中。♯Metooキャンペーンがソーシャルネットワークで席捲中であることは、お伝えした通りで、ムーア候補には逆風が吹き付けます。

性的嫌がらせ問題は別として、思い出して頂きたいのが共和党が確保する上院議席数です。100議席中、共和党は52議席を有するため、税制改革法案の成立に際し造反議員が3人になれば否決となります。記憶に新しい例が、医療保険制度改革法(オバマケア)の撤廃・代替案をめぐる採決です。こちらでご紹介した3人が反対票を投じ、廃案を余儀なくされました。

しかし、共和党のムーア候補が敗北すれば51議席に減ります。従って造反議員が2人出てくれば、税制改革法案はゲームオーバーとなってしまいます。

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(作成:My Big Apple NY)

アラバマ州当局によれば、補欠選挙結果は12月22日、遅くとも26日に正式発表される予定。いずれにしても年末休会中にあたるため、当選した候補が正式に上院議員に就任するのは2018年1月となります。

この時までに上下院で一本化された税制改革法案が上院で可決していれば、何の問題もありません。しかし、仮に1)上院での採決が年明けにずれ込み、2)アラバマ州上院議員補欠選挙で民主党候補が当選し、3)共和党上院で造反者が2人となれば、税制改革法案が否決の憂き目に遭うというわけです。

共和党内ではこうした懸念が渦巻くためか、主流派を中心にムーア氏の出馬辞退を望む声が聞かれています。2016年の大統領選に出馬したルビオ上院議員、オバマケア代替案の採決に反対を表明し否決に追い込んだマケイン上院議員やコリンズ上院議員など少なくありません。

予備選時点からムーア氏に悉く批判的だったマコーネル上院院内総務も、出馬辞退を求める一人です。マコーネル氏は、セッションズ氏の地元人気と知名度を称賛した上で、議員復活への道に期待を表明しています。セッションズ氏の名前が候補者名簿に記載されていなくとも、制度上は有権者が投票用紙に希望する人物の名前を記入し投票できる“記入投票”候補として、出馬が可能であるためです(ちなみに、2010年のアラバマ州上院議員選挙ではオバマケア代替案に反対したマコウスキー氏が記入投票で半世紀ぶりに当選)。さらにマコーネル氏はムーア氏が上院議員に就任した場合に備え、公聴会で倫理調査を行う意思を表明するほど、驚かされますね。

ただ、共和党内部と政権がムーア氏への対応で一致していません。コーニン院内幹事はアラバマ州の選挙結果次第との立場を採ります。トランプ大統領は11月21日、ムーア氏の疑惑に「彼は完全に否定している」と発言、出馬辞退を求める共和党議員と距離を置く状況。税制改革法案の成立を控えた選挙戦ながら、引き続き政権並びに共和党内部が一枚岩で結束できない実態があらためて浮き彫りとなっています。

(カバー写真:Facebook

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