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対米黒字 2年ぶり減 16年6.8兆円、車輸出は拡大2017年1月25日

対米黒字 2年ぶり減 16年6.8兆円、車輸出は拡大

2017/1/25 11:05日経web
  財務省が25日発表した2016年の貿易統計速報(通関ベース)によると、対米貿易黒字は2年ぶりに減り、6兆8347億円となった。鉄鋼や原動機の輸出が減ったことに加え、円高が進んでドル建ての輸出額が円換算では縮んだ。トランプ大統領が不公平だと批判した自動車は輸出の額、台数がともに伸び、2年連続で増えた。日米の新たな通商摩擦の火種となる懸念もある。

 財務省の統計は円建てだが、実際には日本から米国への輸出の9割弱は米ドル建てで決済している。財務省が円換算に用いた16年のレートは前年より10.0%円高の1ドル=108円95銭。このレートから逆算してドルに直すと16年の対米貿易黒字は627億ドルとなり、2年連続増となる。

 円建てで見た「2年ぶり減」の景色がドル建てだと一変することを警戒する見方もある。米国側の貿易統計によると、15年は689億ドルの対日貿易赤字で、16年もほぼ同水準の赤字額だったとみられる。

 トランプ大統領が標的とする自動車は対米輸出の3割を占める最大の品目だ。自動車の輸出は0.6%増え、4兆4115億円と底堅かった。輸出台数で見ても7.7%増の175万台と伸びた。米国景気の回復に伴い、好調な販売が続いたことが背景にある。

 自動車輸出の推移をみると、統計でさかのぼれる1988年は287万台を輸出し、輸出額は3兆円だった。日米貿易摩擦の高まりを受け、日本メーカーが現地生産を進めた結果、15年時点では384万台を生産し、輸出台数とは逆転している。

 現地生産が進んだにもかかわらず輸出額が80年代と比べて増えたのは、日本から輸出する車が大型車や高級車にシフトしていることが背景にある。エアバッグなどが標準装備となり、販売価格が上昇していることも金額が増えた要因だ。

 一方、米国からの自動車の輸入は7.1%減の1万9933台に過ぎない。金額ベースでも1.2%減の901億円で、トランプ氏が「彼らは日本市場で米国車を売れないようにしている」と不満を募らせる要因となっている。

 対米貿易を全体で見ると、輸出額は7.1%減の14兆1431億円と5年ぶりに減少した。鉄鋼が32.9%減、原動機が8.2%減、半導体等電子部品が16.9%減となった。

 輸入額は9.3%減の7兆3084億円と7年ぶりに減少した。飼料用のトウモロコシと小麦など穀物類が24.7%減ったことが響いた。食料品は18%を占める最大の輸入品目だが、米国以外からの食料調達が進み減少傾向にある。

 日本全体の貿易黒字は4兆741億円で、米国向けが他の地域の赤字を補う構造だ。電気製品の輸入が多い中国は4兆6531億円の赤字で、原油を輸入する中東は3兆9164億円の赤字だった。米国からのシェールオイルなどの輸入が増えれば黒字の縮小につながるが、対米黒字が続く構造は変わらない公算が大きい。トランプ政権が是正を求める可能性は否定できない。

 
 
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トランプ氏の日本たたき、垣間見えるフォードの執念2017年1月24日

トランプ氏の日本たたき、垣間見えるフォードの執念

2017/1/24 7:08日経web

 自由貿易体制の「逆回転」が始まった。トランプ米大統領は23日、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱の大統領令に署名し、さらには自動車貿易について「不公平」という言葉を使いながら日本を名指しでけん制した。日本にとっては1980年代の対米貿易摩擦を思わせる展開だが、伏線はあった。厳しい対日姿勢で知られる米フォード・モーターと政権の急接近だ。

北米国際自動車ショーで記者団に囲まれるフォードのフィールズCEO(9日、デトロイト)
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北米国際自動車ショーで記者団に囲まれるフォードのフィールズCEO(9日、デトロイト)

 「非常に前向きな会談だった」。23日、化学大手ダウ・ケミカルの最高経営責任者(CEO)らとともにトランプ大統領との朝食会に参加したフォードのマーク・フィールズCEOは、記者団にこう感想を述べた。

 だが政権側がセットした会談はトランプ大統領一流の「脅し」の場でもある。大統領は米国外に工場を移す企業には「非常に重い国境税を課す」と話し、メキシコなどに工場を持つ企業トップらに改めてけん制を加えた。北米自由貿易協定(NAFTA)の枠組みで稼いできたフォードにとって、決して居心地がいい場ではなかったはずだ。

 それでもフォードにとっては実りがあった。トランプ大統領は米国投資に向けた法人減税や規制緩和を約束した。さらには自動車貿易について「不公平だ」と名指しで日本を批判した。業界団体ならともかく、大統領が車にからんで日本を問題視することは近年では無かったことだ。

 日本が米国製の車を締め出しているという指摘は古くて新しい論争だ。日本の輸入関税はゼロ%である一方で、米国は日本からの輸入乗用車に2.5%を課している。関税上は日本の方が開けているが、日本は輸入時の認証や安全規制、騒音や環境を巡る「非関税障壁」が高いとされる。

 フォードはこうした理屈から日本が閉鎖的だと批判。トランプ大統領が23日に離脱の大統領令に署名したTPPについても「関税を下げれば日本を利するだけ」と強硬に批准に反対してきた。オバマ政権がTPP締結の方針を示した後の16年には「規制が不透明」だとして結局、日本から撤退してしまった。

 そうした経緯を考慮すると、今朝のトランプ大統領の対日発言はフォードの意向に極めて近い。創業家出身のビル・フォード会長は昨夏にニューヨークのトランプ・タワーで選挙戦中のトランプ氏と会っている。その後も両氏は複数回電話で会談。皮肉にもメキシコ投資への対応が2人の距離を大きく縮めた。

 そのフォード会長は業界では日本嫌いで有名だ。11年にトヨタ自動車と決めたハイブリッド車(HV)技術の提携が13年に破談となった際、トヨタの関係者は「創業家との意思疎通の難しさ」を1つの理由に挙げていた。フォードの反TPPの裏にはフォード家があると指摘する関係者もいる。

 メキシコ投資を断念する代わりに、トランプ大統領から投資優遇など自社に有利な条件を引き出したとされるフォード。その中に「日本たたき」が含まれていた可能性はゼロではない。

 10日のデトロイトでの業界向けの会合で、フォード会長は最近トランプ大統領と話し合った内容として「税制、為替、貿易」を挙げた。税制と貿易を巡る議論が動き出した今、次は為替の矛先が日本へと向くのだろうか。トランプ政権は米企業の思惑ものみ込みながら日本に重い影を落としている。

(ニューヨーク=中西豊紀)

 
 
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債務者口座の開示、3メガ銀出そろう 確定判決や和解が条件2017年1月20日

債務者口座の開示、3メガ銀出そろう 確定判決や和解が条件

2017/1/19 23:50 日経web

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 みずほ銀行は民事裁判の支払い義務を果たさない債務者の預金口座情報について、債権者からの請求に応じて開示を始めた。確定判決や和解調書など債務の存在を確認できる文書を示し、弁護士を通じて照会することが条件。既に三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行は開示しており、3メガ銀の対応がそろった。

 現在は債権者が預金差し押さえを求めるには、金融機関の支店まで特定する必要がある。所在がわからず損害賠償金などを得られない例が多い。

 みずほ銀は、弁護士が所属弁護士会を通じて照会する制度に沿って開示する。手数料は無料。三菱東京UFJ銀は既に開示をしており、三井住友銀も主な弁護士会と協定を結んで開示している。

 ただ応じていない金融機関もあり、法務省は裁判所が開示請求できるよう法改正する方針だ。

 
 
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トランプ政策、市場の織り込みどこまで2017年1月12日

トランプ政策、市場の織り込みどこまで
米州総局 山下晃

2017/1/12 7:42 日経web 11時の予定時刻を少し過ぎて始まったトランプ次期米大統領の記者会見に、ウォール街もくぎ付けになった。11日の米市場では為替、債券、株式とも相場が乱高下する展開となった。
11日、記者会見するトランプ氏(ニューヨーク)=ロイター

11日、記者会見するトランプ氏(ニューヨーク)=ロイター

 具体的な中身に乏しかったが、トランプ氏は薬価が高すぎると批判し、防衛予算の削減にも言及した。発言を受け、ダウ工業株30種平均は高値から一時100ドル超下落した。会見の大半はトランプ氏の情報も入手していたというロシアのハッキング問題に集中。経済政策のヒントがあると見込んでいた市場関係者らは肩すかしを食らった。

 「もう政治しかない。統計なんて誰も気にしてない」。ニューヨークの証券会社の債券チーム幹部はこぼす。トランプ氏の大統領就任まであと10日を切り、先行してきた期待が剥げるとの見方や、政策が具体化して追い風となるといった思惑が交錯している。

 トランプ氏の政策を現時点で市場はどう織り込んでいるのだろうか。

 まず、オバマケア(医療保険制度改革法)は修正が確実視される。オバマケアが追い風になっていた病院経営株はさえない。まずは法律の歳出や歳入に関連する部分を修正する財政調整法によりオバマケアの修正が議論される。同法は民主党上院のフィリバスター(議事妨害)が使えない。共和党が両院で過半数を握る状況では修正が比較的容易だ。

 1兆ドル(約115兆円)ともいうインフラ投資の拡大策には懐疑的だ。トランプチームが作成したインフラ投資案では、民間主導で財政には中立との方針だが、そもそも採算が見込めるインフラ開発案件は多くない。財政赤字の拡大を伴う政策に共和党は消極的だ。選挙後に一時は上がっていたインフラ関連株はその後、下落傾向にある。

 短期で市場が最も注目するのは税制。米法人税率の引き下げは確実視しているようだ。米国の法人減税の恩恵を受けやすい中小型株のラッセル2000株価指数は選挙後15%近く上昇しており、9%高いダウ平均を大きく上回る。

 ただ、税制の中身や実現の時期はまだはっきりしない。トランプ案では35%の連邦法人税を15%に引き下げるとしていたが、市場関係者に聞くと20~25%程度を見込んでいる。そして「税制は議会共和党が主導していくだろう」(米エコノミスト)との見方が強い。

 共和党案では法人税は20%。海外利益に対する課税の仕方もトランプ案とは異なる。話題になっているのは共和党案に組み込まれている「国境調整税」だ。米国向けの商品を米国外で生産する活動に対して課税する考えだ。米国外でつくり米国で売るタイプのアパレルや自動車産業への影響が大きく、米国産業界を取り巻くサプライチェーンに大きく影響する。

 これは原産地主義をとる世界の税制と異なる。世界貿易機関(WTO)が容認するか微妙だ。「実現性は正直分からない」(ニューヨークの運用会社幹部)と現時点で市場は織り込んでいない。実現するとドル高要因にもなり波乱の種だ。

 国境調整税をはじめとして、共和党案は法人税を引き下げる一方で新たな財源を確保しようとの意向が見える。つまり、トランプ案で押し切ろうにも財政規律を重視する共和党員に造反組も出かねない。トランプ政権下の税制改正にも民主党の議事妨害を避けるため財政調整法が活用される見通し。だが共和党上院は52議席と過半数ぎりぎり。今夏に向けた税制議論の展開は波乱含みだ。

 政策の着地点が見えないからこそ、11日のように市場はトランプ氏の一挙手一投足に大きく反応する。「こんな日が100日、もしかして4年も続くのだろうか」。米ヘッジファンドのオフィスでは会見後にこんな会話も飛び交っていた。

(ニューヨーク=山下晃)

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日韓、少女像で再び岐路 首相周辺「一線越えた」2017年1月7日

日経web2017/1/6 23:57
 日本政府は6日、韓国・釜山の日本総領事館前に従軍慰安婦問題を象徴する少女像が設置されたのを受け、駐韓大使を日本に一時帰国させるなどの対抗措置を発表した。「最終的かつ不可逆的解決」を約束した日韓合意から1年。合意を覆す動きに危機感を抱き、強硬策に出た。関係改善に動き出していた日韓関係は再び岐路に立つ。
釜山の日本総領事館前の少女像=AP

釜山の日本総領事館前の少女像=AP

 「極めて遺憾であるということを4項目によって示した」。菅義偉官房長官は対抗措置を発表した記者会見で強調した。

 長嶺安政駐韓大使は週明けに帰国し、安倍晋三首相や岸田文雄外相と協議する見通しだ。駐韓大使の一時帰国は2012年8月、当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領による島根県の竹島(韓国名・独島)上陸を受けて実施して以来。外務省幹部は「一時的に外交断絶を意味してしまう召還ではなく、あくまで一時帰国」と説明するが、帰任時期は未定だ。

 外務次官級の日韓ハイレベル経済協議は13日にソウルで開催する予定だったが延期する。金融危機などの際にドルを融通しあう通貨交換(スワップ)は16年8月に協議再開で合意したが中断する。韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は6日、韓国外務省に長嶺大使を呼び遺憾の意を伝えた。

 15年12月の日韓合意では韓国政府が元慰安婦を支援する財団を設立し、日本政府は10億円を拠出するとした。日本は既に拠出。元慰安婦に財団を通じ現金が渡っている。

 一方、韓国政府はソウルの日本大使館前に設置された少女像の移転について「解決への努力」を約束したが、実現していない。安倍首相周辺は「ソウルの像をどかしてもらえると思ったが、像が増えた」と指摘。釜山の像新設が「一線を越えた」との認識を示した。自民党の二階俊博幹事長は6日のBSフジ番組で「韓国は大事な国だが、交渉するのはなかなか面倒な国だ」と語った。

 安倍首相は6日、米国のバイデン副大統領と電話で協議。バイデン氏は「合意を支持しており、着実な履行を強く期待する」と強調。首相は「日韓両政府が責任を持って履行することが重要で、逆行することは建設的でない」と語った。

 日本の重い対抗措置は、韓国の合意不履行を国際社会に訴える狙いもある。それでも日本政府は「韓国との対話の窓口は閉ざしていない」(政府高官)との立場だ。

 北朝鮮への対応など地域の安定に日韓両国の連携は欠かせない。ワシントンで現地時間5日に開いた日米韓の外務次官協議では北朝鮮問題に加え、中国を念頭に「南シナ海での最近の動向に懸念を共有した」(日本外務省)。日韓関係の悪化は地域全体に影響を及ぼす。

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トランプ氏介入、トヨタにも メキシコ投資に「あり得ない!」2017年1月6日

他国の私企業に容喙する方があり得ない。
2017/1/6 6:15 日経web
【ラスベガス=中西豊紀】米国雇用を優先させるトランプ次期米大統領の介入戦略が日本企業にも及んできた。同氏は5日、トヨタ自動車のメキシコ工場新設について自身のツイッターに「ありえない!。高い関税を払え」と投稿した。米有力製造業にとどまらず日本を代表する企業までもが名指しで狙われた形で、米産業政策の不透明感がさらに高まっている。
「トヨタはメキシコのバハ・カリフォルニア州に工場を建て、米国向けに『カローラ』をつくろうとしている。ありえない!。米国に工場を建てるか、高い関税を払え」と投稿したトランプ氏のツイッター
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「トヨタはメキシコのバハ・カリフォルニア州に工場を建て、米国向けに『カローラ』をつくろうとしている。ありえない!。米国に工場を建てるか、高い関税を払え」と投稿したトランプ氏のツイッター

 この日、トランプ氏は唐突に「トヨタはメキシコのバハ・カリフォルニア州に工場を建て、米国向けに『カローラ』をつくろうとしている」とツイッターに投稿した。そのうえで「米国に工場を建てろ」と書き込み、メキシコ工場新設の撤回を求めた。

 3日にはフォード・モーターがトランプ氏への配慮でメキシコ工場新設の撤回を発表したばかり。同じ日にトランプ氏はゼネラル・モーターズ(GM)のメキシコ投資も批判し、4日には「これで終わりではない」とつぶやくなど企業介入を続ける意向を示していた。メキシコ投資で外資企業に批判の矛先が向いたのはトヨタが初めてと見られる。

 トランプ氏の批判を受け、トヨタは同日「2015年4月に発表したメキシコへの投資で米国の雇用が減ることはない。トランプ氏の政権と共にお客様と自動車産業につくせるよう協力していきたい」とのコメントを発表した。

 トランプ氏がなぜトヨタを標的としたのかは明らかになっていない。トヨタの新工場の建設予定地はバハ・カリフォルニア州ではなくグアナファト州で、投稿には一部誤解がある。同社がメキシコ工場新設を決める際には、米国工場の雇用を減らさないよう配慮をほどこしている。

 ただ、トヨタの豊田章男社長は日本時間の5日に「ひとたびやった以上、雇用と地域社会への責任がある」と記者団に述べ、メキシコ工場新設を見直さない考えを示した。トランプ氏の投稿はその直後で、社長発言が同氏を刺激したとの見方もある。

 トヨタは1980年代、日本車の対米輸出増がもたらした日米自動車摩擦の余波で米国に工場を建設した経緯がある。トヨタのメキシコ新工場は19年稼働予定で、11月の米大統領選直後に起工式を開いたばかり。フォードは18年稼働予定の工場新設を撤回した。今後のトヨタの対応はトランプ氏流の介入を外資がのむかどうかの「踏み絵」にもなる。

 
 
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米中角逐を映す投資マネーの常在戦場2016年12月25日

米中角逐を映す投資マネーの常在戦場
編集委員 滝田洋一

2016/12/25 5:30
日本経済新聞 電子版

 中国の債券市場が売りの火砕流に見舞われている。トランプ次期米大統領の登場で、米中はつばぜり合いの局面に入りそう。時ならぬ債券の乱は、中国側の金融のアキレスけんを浮き彫りにしている。

 習近平国家主席が現在の職に就いたのは2013年3月14日だが、前年の12年から権力を掌握しつつあった。そこで12年に入って以降の中国の外貨準備と米国債保有額の変化をみると、グラフのようになる。

 

 中国の外貨準備は12年初めから、ピークとなった14年6月末までに、7396億ドル増加した。ところが、その間に中国による米国債の保有額は1022億ドルしか増えていない。その差額である6000億ドル余りが、米国債以外の資産に投資されたことになる。

 ただし中国の米国債保有には、ユーロクリアなど証券保管機関の名義にしている分もある。その分はユーロクリアの所在地であるベルギーの保有分として勘定される。

 それを考慮しても、外貨準備が急拡大していた14年前半までの局面で、中国がかなり露骨な米国債離れを進めていたのは間違いない。オバマ政権はくみしやすし。今のうちに基軸通貨ドルの足元を浸食してしまおう。そんな思惑もあったはずだ。

 ところが14年後半になって、外貨準備をめぐる光景がガラリと変わる。中国の経常収支は引き続き黒字だったのだが、それを上回るピッチで中国から民間資本が流出しだしたのだ。

 外貨準備は14年後半以降、減少の一途をたどり、15年1月末には12年初めの水準を下回った。興味深いのは、その局面で中国が米国債の保有額をほとんど減らさなかった点だ。

 米国債を保有し続けることで、米国に弱みを見せまいとしたようにもみえる。その努力は16年前半まで続いたが、後半に入りもはや米国債を保有し続けることは難しくなった。

 外貨準備の減少に拍車がかかってきたためで、16年11月末の外貨準備は3兆ドルすれすれまで落ち込んだ。14年6月末には4兆ドルに迫っていたのと比べると、実に1兆ドル近い減少ぶりである。16年後半に入ってからだけでも減少幅は1500億ドル余りにのぼる。

 事ここに至って、中国はまとまった額の米国債を、換金売りに出さざるを得なくなった。16年後半に入り10月末までの米国債の売越額は1200億ドル余りだから、ほぼ外貨準備の減少幅に匹敵する。

 

 それだけ中国からの資本流出の圧力が強いのである。米連邦準備理事会(FRB)が17年にかけてハッキリした利上げ方針を打ち出したことで、来年にかけて中国からの資本流出が一段と拡大するのは必至だ。

 その結果、様々な経路を通じて、中国の金融は逼迫する。ここへきて大騒ぎになっているのは債券相場の急落。10年物国債の利回りは9月には2%台半ばだったが、今や3%台半ばとなっている。

 債券市場の値崩れは、単に企業の資金調達コストの増加を意味するばかりでない。債券を見せ金とするような不正な取引が、長期金利の上昇を機にいぶり出されようとしている。

 中国企業の過剰債務はかねて問題になっていた。不正な取引で辻つまを合わせていた部分が破綻しだすと、そこに待ち受けているのは取引相手方に対する不信の連鎖だ。

 こんな局面では、自国通貨を思い切って切り下げて外需に活路を見いだしたいところだろう。事実、人民元相場はじりじりと切り下がっているのだが、下手をすると通貨安と資本流出の加速の悪循環を起こしかねない。

 だから中国当局としては外貨準備を取り崩して、通貨安を抑えようとしているのだ。だが、トランプ次期大統領は「米中の貿易不均衡が拡大し続けているのだから、通貨安そのものがけしからん」と責め立てるだろう。こうなると、いよいよ中国経済の出口が見えなくなる。17年の時限爆弾である。

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トランプ次期米政権を読む 通貨・金融政策 FRB人事が左右2016年12月23日

トランプ次期米政権を読む 通貨・金融政策 FRB人事が左右

2016/12/23付 日経web
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  11月の米大統領選で逆転勝利したドナルド・トランプ氏が、来年1月20日に就任する。「偉大な米国」や「米国第一」を掲げ、米国の経済、外交・安全保障、内政を刷新する構えだ。トランプ次期米政権はどう動くか。見どころを読み解いた。
14日、イエレン議長はトランプ次期政権での処遇を聞かれた=ロイター
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14日、イエレン議長はトランプ次期政権での処遇を聞かれた=ロイター

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 「再任されるかわからないし、私が決めることでもない。今は何も考えていない」。米連邦準備理事会(FRB)が1年ぶりの利上げを決めた14日の記者会見。自身の処遇を問われたイエレン議長は、顔を一瞬紅潮させ、ひきつった笑顔のまま一気に答えた。

 トランプ次期政権の人事が次々と決まるなかで、市場はFRB高官の処遇を注視する。トランプ氏は選挙戦で、2018年2月に任期が切れるイエレン氏について「おそらく再任しない」と言及。人事次第では、利上げ路線や基軸通貨ドルの通貨政策が大きく変わる。

 市場は「次のFRB議長は、利上げに積極的な『タカ派』が就く」とみる。トランプ氏が「イエレン氏はオバマ政権を利するために、政策金利を据え置いている」とFRBの低金利政策を批判したことがあるためだ。

 共和党主流派が候補の一人と目を付けるのはスタンフォード大のジョン・テイラー教授だ。同氏は7日、下院公聴会に早速招かれ「政策金利は適正水準をかなり下回っている」とFRBの低金利政策を痛烈に批判した。

 テイラー氏はインフレ率と成長率を基に適正金利をはじき出す「テイラー・ルール」の考案者。中央銀行で知らない者はいない。現在の適正な政策金利は2%以上になるとしており、足元の0.50~0.75%から大幅な利上げが必要になる。

 テイラー氏は01~05年にブッシュ政権下で財務次官を務め、党指導部と近い。党主流派の一部はテイラー・ルールに基づいた政策運営を求める「FRB監査法案」すら用意している。

 もっとも、国際金融関係者の一人は「トランプ氏がFRBにタカ派を送り込むという市場の観測は信じがたい」と疑問視する。FRBが利上げペースを加速すれば、14年ぶりの高値圏にあるドル相場がさらに上昇する可能性があるためだ。

 トランプ氏は当選後も「米貿易赤字はひどい水準だ」と主張し、米製造業の再生を支持者に訴えている。ドル高には言及していないが、貿易赤字の拡大が続けば矛先は為替相場に向かいやすい。さらなる金利上昇はインフラ投資などの目玉政策にも逆風だ。

 トランプ政権が金融緩和に積極的な「ハト派」色を強めれば、利上げに慎重な姿勢で知られるイエレン氏は議長を続投する可能性が出てくる。トランプ氏の腹心、ムニューチン次期財務長官やロス次期商務長官は「イエレン氏はよくやっている」と評価している。

 ムニューチン氏は「政権発足後、まずFRB理事ポストを速やかに埋める」と言う。与野党の対立で2人分の理事職が空席。トランプ次期政権が金利上昇とドル高を嫌って理事ポストに「超ハト派」を送り込めば、利上げ加速を織り込んでいる市場には「サプライズ」となる。

(ワシントン=河浪武史)

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平壌「ショーウインドー都市」の裏を撮った男2016年12月22日

平壌「ショーウインドー都市」の裏を撮った男  電子版アジア編集長 山口真典

2016/12/22 6:30
日本経済新聞 電子版

 北朝鮮の経済は疲弊しているのに、平壌の生活は豊かになったように見えるのはなぜか。そんな平壌の裏側に迫って、庶民の生活を「隠し撮り」したロシア人の映画監督がいる。さまざまな妨害をすり抜け、北朝鮮体制の正当性を誇示するための「ショーウインドー都市」である平壌のいまを克明に記録した監督は、「北朝鮮の子どもたちが自由なき強制から1秒たりとも抜け出せないという現実をしっかり見てほしい」と訴えている。

 
「太陽の下で-真実の北朝鮮-」(配給=ハーク)の一場面。朝鮮少年団に選抜されたリ・ジョンミ(右)は優等生だが、その表情からは憂いものぞく
(C)VERTOV SIA,VERTOV REAL CINEMA OOO,HYPERMARKET FILM s.r.o.CESKA
TELEVIZE,SAXONIA EN
TERTAINMENT GMBH,MITTELDEUTSCHER RUNDFUNK 2015

「太陽の下で-真実の北朝鮮-」(配給=ハーク)の一場面。朝鮮少年団に選抜されたリ・ジョンミ(右)は優等生だが、その表情からは憂いものぞく
(C)VERTOV SIA,VERTOV REAL CINEMA OOO,HYPERMARKET FILM s.r.o.CESKA
TELEVIZE,SAXONIA EN
TERTAINMENT GMBH,MITTELDEUTSCHER RUNDFUNK 2015

 ヴィタリー・マンスキー監督。彼は2年間かけて、ようやく北朝鮮当局から記録映画撮影の許可を得た。平壌の一般家庭を1年間にわたって「密着取材」する、という目的のはずだった。

■録画スイッチ入れたまま放置して「隠し撮り」

 ところが、主人公である8歳の少女、ジンミの家族には、常に黒い背広を着た男たちが寄り添い、「家族の住む高層マンションや食卓に並ぶ料理、父と母の仕事、ジンミが参加する行事……。すべてを過剰に演出していた」(マンスキー監督)。父母とジンミは、用意された台本どおり、忠実に「幸せな家族」を演じていた。

 失望した監督は一計をめぐらせた。わざとカメラの録画スイッチを入れたまま放置し、「観客にしっかり周囲まで見てもらうため、ルーズショット(カメラを引いて広い範囲を撮影する手法)」で隠し撮りし始めたのだ。

 監督とスタッフは台本どおりに撮影しているよう見せかけながら、当局者が事細かに演出する様子や、撮られていると知らずに見せる人々の素の表情まで記録し続けた。最後はフィルムを差し替えて当局の検閲を逃れ、北朝鮮の外に持ち出した映像を編集し、ドキュメンタリー映画「太陽の下で-真実の北朝鮮-」を完成させた。

 それを知った北朝鮮は、ロシア政府に「映画の公開禁止とフィルムの破棄、制作者の処罰」を要求。ロシア政府も「北朝鮮との友好を損ねる」と応じて、一部の上映を差し止めた。だが、映画は韓国や米国、ドイツ、イタリアなどで封切られて話題を呼び、日本でも17年1月21日から全国で順次公開する。

 学校の女性教師が「金日成大元帥様が『日本人と地主は我が人民を苦しめる悪い奴らだ』とおっしゃったから、懲らしめなければならない」と授業で教えて子どもたちに暗唱させる様子を、5回にわたって繰り返し流す。監督は、「小さい頃から強制的にプロパガンダを学ばせられ、やがて大人になった群集が指導部の言うがままの行動を取る姿を知ってほしい」と力を込める。

 どうして北朝鮮の庶民生活を撮ろうと思ったのかと問うと、監督は「私が、秘密警察がにらみを利かせた旧ソビエト連邦の出身だから」と答えた。「北朝鮮の今を撮るのは、全体主義の社会で苦しんだ私や家族の過去を撮るのと同じこと」と振り返る。「他の国から来た監督なら、一糸乱れぬ行進やスローガンを叫ぶ姿を滑稽なコメディーのように描くだろうが、私は北朝鮮の社会に潜む苦しみに深く共感しながら撮った」

 平壌に滞在した1年間、平壌の裏側を垣間見る機会もあった。たとえば、平壌の人々は毎朝、イデオロギーの宣伝にあふれ、指導者の写真を大写しにした朝鮮労働党機関紙「労働新聞」を買い求めるために行列する。なぜなら「1カ月ごとにすべての新聞を提出しなければならない」という。指導部への忠誠心をアピールする証拠にするためだ。

 マンスキー氏は「平壌の目抜き通りに立ち並ぶ商店には従業員がいない。そばに寄ってガラスケースを見ると、ケースの中には色つきの風船を入れていた」と、写真を見せてくれた。外国人らが車で通り過ぎる時、いかにも商品を陳列してあるかのように見せるためらしい。さらに、最近目だって増えたレストランでは「あまり客を見かけない」と感じたが、時おり見かける顧客の姿から一定の数の富裕層がいるとわかった、とも証言した。

■豊かな生活保証する代わりに忠誠心と「演技」要求

 
平壌に1年間滞在して庶民の生活を撮影した映画を作ったロシア人のヴィタリー・マンスキー監督

平壌に1年間滞在して庶民の生活を撮影した映画を作ったロシア人のヴィタリー・マンスキー監督

 金正恩(キム・ジョンウン)委員長は、11年末に死去した金正日総書記に代わって最高指導者に就いた後、平壌の大々的な再開発事業を優先して取り組んだ。40階を超す高層マンションや複合ショッピングモール、レストランなどを造り、既存のビルも軒並み改装した。携帯をいじりながら街を歩く人々の姿も当たり前となり、平壌を訪れた人々は「北朝鮮経済の再建」を実感したような錯覚に陥る。

 しかし、平壌に住めるのは党や軍の幹部など限られた特権階級だけ。田舎に住む庶民は、許可なく足を踏み入れることはできない。指導部は平壌市民に地方より豊かな生活水準を保証する代わりに、絶対的な忠誠心とともに外向けの「演技」を要求する。金正恩体制が盤石であるとアピールするため頻繁に行うイベントのたびに、市民や学生は駆り出される。マンスキー監督は、平壌という街自体が体制を賛美する「ショーウインドー」である実態を描こうとしたのだ。

 ジンミは優秀な子供だけが選抜される「朝鮮少年団」に入団し、周囲から祝福を浴びる。ところが、ジンミの瞳からは、なぜか涙がこぼれる。それでも自分の感情を押し殺すように「いつでもどこでも金正恩元帥様の教えのとおりに行動し、社会主義祖国の後継者として強く生きることを、栄えある少年団の一員として固く決意します」とカメラに宣言するのだ。

 マンスキー監督は、ため息をつく。「もし住民の表情に恐怖を見い出せていたら、希望を感じただろう。恐怖を感じていれば、それを取り除こうとする動きを期待できるからだ。だが、システムにどっぷりつかり自由を経験したことのない北朝鮮の人々は恐怖すら感じていない」

 インタビューの最後、マンスリー氏に北朝鮮の体制はいつまで続くと思うか、と問いかけた。すると語気を強めながら、こう語った。「残念ながら、我々が生きている間に統治システムが変わることはないだろう。もし奇跡が起こって、この映画を平壌で上映できたとしても、私が込めたメッセージを彼らは理解することができない。それほど全体主義の社会は恐ろしくひどいものなのです」

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米次期政権が「国家通商会議」 トップに対中強硬派2016年12月22日

米次期政権が「国家通商会議」 トップに対中強硬派

2016/12/22 11:46
  日経web

 【ワシントン=河浪武史】トランプ次期米大統領は21日、ホワイトハウス内に貿易政策を統括する「国家通商会議」を新設し、トップに対中強硬派のピーター・ナバロ米カリフォルニア大教授を起用すると発表した。同会議は貿易政策の助言だけでなく、米国家安全保障会議と組んで国防と通商政策を連携させた外交戦略も立案するという。

カリフォルニア大アーバイン校教授ピーター・ナバロ氏(66)
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カリフォルニア大アーバイン校教授ピーター・ナバロ氏(66)

 米政権がホワイトハウス内に通商政策の統括組織を置くのは初めて。トランプ氏は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱表明など貿易政策の抜本的な見直しを掲げており、国家通商会議がその司令塔となる。

 トップに就くナバロ氏は米中通商政策の専門家で「中国は補助金や通貨安誘導で対米輸出を不当に膨らませている」と批判してきた。鉄鋼製品の不当廉売などを巡って米中の通商摩擦が一段と強まる可能性がある。同氏は選挙戦中もトランプ氏の経済・外交顧問を務め、商務長官に就くロス氏と共同で1兆ドル(約117兆円)のインフラ投資計画を立案した。

 ナバロ氏は南シナ海で海洋進出を活発化する中国の軍事戦略も強く批判している。トランプ氏が発表した声明文では、国家通商会議は安保面でも大統領に助言するとしており、ナバロ氏は次期政権の米中外交に強い影響力を持ちそうだ。

 トランプ氏は同日、著名投資家のカール・アイカーン氏を規制改革担当の特別顧問に迎えると発表した。「物言う株主(アクティビスト)」で知られ、金融規制の緩和を主張。大統領選では早くからトランプ氏支持を打ち出していた。

 アイカーン氏は一時、財務長官候補に挙がっていたが、同氏が選挙後に辞退したとされた。金融規制改革に向け、米証券取引委員会(SEC)の次期委員長人事などで影響力を発揮しそうだ。

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