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株高・円安を促す日米の「お互いさま」相場2016年12月12日

編集委員 滝田洋一
2016/12/11 5:30日本経済新聞 電子版

 師走の東京市場が株高に走っている。米国のトランプ次期政権が日本との相性が良さそうだとの期待が広がっている。財政・金融のマクロ経済政策から外交・安全保障政策まで、日米の「相互補完」は高まる見込み。市場の期待にはそれなりの根拠がありそうだ。

ドルは9日の東京市場で114円台半ばまで下落。NY市場では115円台を付けた

 1ドル=107円台vs.115円台。思ってもいなかった円安・ドル高が、日本にとって最大の棚からぼた餅。9月の日銀企業短期経済観測調査(短観)で大企業・製造業の想定為替相場は107円台。それが足元では115円台まで円安が進んでいる。

 アベノミクスの下での企業収益好転の原動力は円安だったのに、今年に入り円高が進んだことで収益には下押し圧力がかかっていた。日銀短観の想定為替相場を上回る円高で、真綿で首を絞められるように企業収益は圧迫されていた。

 ところがトランプ次期大統領の登場で、為替の流れは円安へと逆転した。米国のポリシーミックス(政策組み合わせ)の変更が背景にある。トランプ氏が減税やインフラ投資による積極財政を打ち出したことで、金融緩和からの出口が容易になったのである。

 12月13~14日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で、1年ぶりの利上げに踏み切ることは確実視されている。問題は2017年以降の利上げペースである。

 大統領選前までは17年中の追加利上げはない、との見方さえあった。だが、今や17年に2回、18年は3回の追加利上げが一般的な見通しになっている。ゴールドマン・サックスに至っては、17年に3回、18年に4回の利上げを見込んでいる。

 その一方で、日銀は10年物国債の利回りをゼロ%近辺に誘導する「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」を実施している。いきおい日米の金利差は拡大し、円安・ドル高が進みやすくなっている。

 こうした円安は自然な形で進みやすい。ひとつは日本からの外債投資。足元では為替リスクを回避するためのコストである「ベーシススワップ」が一段と拡大している。外債投資がヘッジなしの形に変われば、為替市場で円を売って外貨を買う需要が増加する。

 もうひとつは外国勢による日本株投資。大統領選を機に日本株買いが拡大しているが、こうした対日投資は為替ヘッジ付きのものが多い。「株買い・円売り」のペアトレード(組み合わせ取引)が膨らむことで、日本株高と円安が同時に進みやすくなる。

 日本の企業にとっては、好循環が実現しやすい環境となっている。17年の春季労使交渉での賃上げを演出したい安倍政権にとっても、こうした動きは大切にしたいところ。国内の市場参加者も雰囲気の変化を察して、押っ取り刀で流れに乗ろうとするだろう。

 もちろん、トランプ政権によるドル高のけん制は気になるところだが、幸いなことに米景気は上向きつつある。雇用が増え賃金が上昇する局面では、企業の競争力低下というドル高の負の側面は意識されにくい。

 それにもまして、トランプ政権の下で敵役になるのは、メキシコであり中国であるとの認識が市場参加者に浸透しつつある。オバマ政権は中国の台頭を受け入れ、米中2カ国で様々な問題を仕切ろうとしたが、トランプ次期政権の対中姿勢は全く異なる。

 1980年代から90年代に台頭する日本をたたいたのと同様に、経済・安全保障の面で中国たたきを強める気配をみせている。その際、安倍政権はちゅうちょなく米国の同伴者として振る舞うだろう。

 トランプ政策に伴い米国の政府債務残高や対外債務残高は拡大する見通し。米国債の買い手として当てにならなくなった中国に代わり、安定的な買い手となるのは日本勢だろう。一方、ニューヨーク・ダウが2万ドルに迫るなど米国株が割高になるなか、米国人投資家は日本株に買いを入れる。

 デット(米国債)とエクイティ(日本株)を交換し合う姿は、「デット・エクイティ・スワップ」といえようか。市場が織り込みつつあるのは、そんな日米の相互補完の関係といってよい。それに乗るか乗らぬかは、投資家の決断次第ではあるが。

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トランプ相場いつまで 「過剰な円安」に警告も2016年12月1日

 日経web
編集委員 田村正之

2016/11/28 5:30
日本経済新聞 電子版

 日経平均株価が高値圏で推移している。ドナルド・トランプ米次期大統領による減税やインフラ投資を見越した米金利の上昇が起点だ。ただし米金利上昇→ドル高・円安→日本株の上昇というプラスの循環がこのまま続くかどうか、懸念の声も増えている。

■米ドルは歴史的な高値

 

 不安要因の一つ目は金利差とドル高の関係だ。長期的に日米長期金利差(10年物国債金利の米国マイナス日本)とドル円相場は連動性が高い(グラフ)。確かに大統領戦後に長期金利差が拡大しているが、ドル高・円安ピッチがあまりに急だ。

 2001年以降の長期金利差とドル円相場の水準から回帰分析の手法で妥当レートを計算してみると、25日時点の長期金利差(2.33%)が示すドル円相場は105.5円だ。つまり長期金利差が示す水準以上に、足元ではやや過剰な円安になっている可能性がある。先週末には一時113円台だった。

 JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長も「14年にドル円相場が長期金利から大きく乖離(かいり)する前、01年から13年のより長期金利差との連動性が高かった時期のデータで計算すれば、足元の適正レートは102円程度」とみる。また前年の経常収支と長期金利差で総合的に計算したモデルでは、17年の適正レートも103円だという。

 急ピッチな円安の要因として佐々木氏は「トランプ次期大統領の政策だけでなく、2つの損切りがあった」と指摘する。一つは大統領選の前に投機的な円買いポジションが積み上がっていた点。それが大統領選後の円安で損切りを余儀なくされ、円安をさらに加速させた。

 もう一つは世界の投資家の債券の買い持ちポジションが大きかったこと。トランプ氏の勝利による長期金利上昇(債券価格低下)で慌てて損切りの売りを余儀なくされ、それが長期金利上昇をさらに加速させた。

 その結果、米ドルの水準は極めて高くなり、企業業績や経済に悪影響を与えかねない水準になっている。これを端的に示すのが実質実効レート。インフレ率の差を考慮したうえで複数国との為替レートを反映させた最も総合的な為替レートで、資本移動が自由な国では、長期的には平均水準に回帰することで知られる。

 

 グラフでわかるように米ドルの実質実効レートは利上げを先取りする形で14年半ばから急な上昇に転じていた。米製造業の業績への圧迫などが指摘されて米国内でドル高への批判が高まり、今年になっていったんドル高修正が進んでいた。

 それがトランプ・ショックで再び急速なドル高に転換した。現在のドルの実質実効レートは十数年来の歴史的な高値圏にある。実質実効レートが平均値に回帰する時期はもともと予測できないが、いずれは必ず起きるというのが過去の経験則だ。

 今年のドル高修正で一息ついていた米製造業の業績は、足元のドル高で再び圧迫されている。米連邦準備理事会(FRB)のラエル・ブレイナード理事は講演で「14年から16年のドル高(のもたらす引き締め効果)は、米政策金利にして2%もの利上げに相当する」と述べている。

 トランプ氏は、当選後も米製造業の国外移転阻止などにたびたび言及している。さらなる長期金利の上昇やドル高を容認するかについては疑念も多い。

 大統領戦前に積み上がっていた投機筋などの円買いポジションはすでにかなり解消されていて、ドル買い方向への巻き戻しのエネルギーは一服している。今後、トランプ氏のドル高抑制発言などがあれば、円高への修正リスクも現実味を帯びる。

■米国外からの修正リスクも

 もちろん、もともとがトランプ氏の政策の「いいとこ取り」相場ともいえるだけに、来年1月の就任まで具体的な政策評価は難しく、トランプ相場は少なくともそこまで続くとの見方もある。

 為替アナリストの間でドル高・円安は行きすぎとの懸念表明が多い一方、「経済成長率にダイレクトに影響する減税政策などを考えればドル高が進むのは自然。円高シナリオにこだわるといつまでも間違う」(アライアンス・バーンスタインの村上尚己マーケット・ストラテジスト)との指摘も根強い。

 ただし国外から不透明材料が出れば別。例えば欧州の政治情勢だ。まず12月初旬にはイタリアで憲法改正への是非を問う国民投票が実施される。否決されて現政権の求心力が下がる可能性も指摘されている。その場合、反欧州連合(EU)政党である五つ星運動に追い風だ。

 来年に入っても3月にはオランダ総選挙、4~5月のフランスの大統領・議会選挙、9月のドイツ総選挙でそれぞれ反EU勢力が躍進するリスクを抱える。危機感が高まれば事前に円買いが起きる可能性もある。

 ドル高が新興国経済に与える影響にも今後より関心は高まるだろう。トルコが通貨防衛のために24日利上げに踏み切るなど、各国経済への打撃も鮮明になりつつある。

 みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「目先円安がさらに進む可能性は否定できない。しかしドル相場がすでに歴史的な高値圏にあることを考えると、トレンド転換リスクを警告せざるを得ない」と話している。

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タワマン節税潰しとは言えぬ2016年11月29日

40階は1階の1割高 マンション固定資産税で検討

2016/11/26 23:42 日経web
  総務省が検討している高層マンションの固定資産税の見直し案の概要がわかった。現在は何階でも床面積が同じなら税額も同じだが、1階上がるごとに税額が増えるようにして、40階建てのマンションなら最上階は1階より10%程度高くする。高層マンションでは眺めが良い上層階の販売価格が高いため、固定資産税にも一定の差を設ける。

 与党の税制調査会で議論して、2017年度税制改正大綱に盛り込む。既存の高層マンションは見直しの対象外で、18年以降に引き渡す20階建て以上の新築物件の固定資産税を見直す予定。中間の階より下の階は税額を安くするため、マンション1棟の固定資産税額は今の制度と変わらない。

 例えば今の制度なら各戸の固定資産税額が年20万円になる40階建てマンションの場合、新たな仕組みを適用すると1階が約19万円。階が上がるごとに額が増え、40階では21万円になる。30階建ての場合は、1階と最上階の差は小さくなる。

 これとは別に国税庁は18年度税制改正で高層階の相続税を重くすることを検討する。高層階の部屋は市場価格の割に相続税が安いため、節税策として使われていた。

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中国工場売却、従業員の乱 ソニーに補償金要求2016年11月24日

撤退の難しさ浮き彫り

2016/11/23 2:00
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日経web

 ソニーの中国広東省広州市の工場で、従業員による大規模なストライキが発生していることが22日までに分かった。同工場の売却を発表したことに対して従業員が一斉に反発し、4千人を抱える工場で生産が中止に追い込まれる事態となった。中国では待遇改善だけでなく、撤退に絡んでも日本の大手企業を狙うストが相次ぐ。中国ビジネスの難しさを改めて浮き彫りにした格好だ。

仕事をすることをやめたソニーの広州工場の従業員たち(17日、広東省広州市)

仕事をすることをやめたソニーの広州工場の従業員たち(17日、広東省広州市)

 発端はソニーが7日に発表したリストラ計画だ。計画は広州市にあるカメラ部品の工場を約100億円で中国企業に売却し、同工場から完全に撤退するというものだ。

 工場は2005年に稼働。足元で4千人もの雇用をもたらしているが、中国経済が減速する中で厳しい決断を迫られた。従業員は全て売却先の中国企業に引き継ぐとしており、ソニーに特段の非があるわけではない。

 ところが、この決定に翌日から従業員が一斉に反発した。

 「我々はソニーの社員だ!」「何の説明もなく勝手に中国企業に工場を売るな!」「デモが嫌なら補償金をよこせ!」

 従業員らは口々にこう叫び、工場幹部らに迫った。10日からは工場の出入り口を封鎖して製品の出荷を遅らせる強硬策に出た。15日には納期が迫る製品の出荷に困る状況下、警察がようやく事態収拾に乗り出し、デモを鎮圧。負傷者も出て、デモを主導した11人の従業員らが逮捕される事態にまで発展した。

 しかし、これで収まらなかった。

 「我々従業員は機械ではなく奴隷でもない。我々を(他の企業に)売らないでください。我々にも尊厳と人権があります」

 16日からは従業員らがこうした横断幕を工場の門に掲げ、工場に出勤するものの仕事はせず、工場内の食堂や運動場で思い思いに時を過ごす。それが22日現在まで続いている。周囲は今も万が一に備え、多くの警官隊が見張る異様な状況だ。

 従業員が強硬手段に出るのには訳がある。狙いは「補償金」だと従業員らは口々に認める。26歳の女性従業員は「ソニーが撤退すると聞いて驚いたけど、リーダーの人から、ストに参加したら、ソニーは有名な大きな会社なので多額の補償金がもらえると聞き、よく分からないけど参加した」と明かした。そのうえで「お金がもらえるまで生産ラインには戻らないわ」と言い切った。

 実際、企業側に全く非がなくても「多額の補償金を積むことで早期収拾を優先してきた日本企業は多い」。中国の労務や撤退問題に詳しいIBJコンサルティング(広州市)の前川晃広氏は進出企業の実態をそう指摘する。従業員に騒ぎ続けられるよりも、補償金で解決するなら、それで収拾してしまいたいというのが企業側の考えだ。

 そのことをよく知る従業員らは、交流サイト(SNS)を使って過去の事例などの情報を共有し合う。「どの企業が、何かあった時、どれだけの補償金を出したのかなどをよく把握し、それを交渉の材料に使う」(前川氏)のだという。

 今回のソニーのケースも手続き上、企業側に全く非はない。労働契約法第33条は「雇用単位が名称、法定代表者、主たる責任者又は投資家等の事項を変更することは、労働契約の履行に影響しない」と規定。今回は売却で雇用主が変わるだけであるため、ソニーは従業員に経済的な補償は一切行わなくていい。

 本来支払う必要のない補償金という日本企業が何度も苦汁をなめた問題に対し、ソニーがどう臨み、事態を収拾するかが注目される。

 中国側もこの問題をどう受け止めるのか。「量から質へ」と産業高度化を標榜する以上、海外企業などに公正な事業環境を用意する必要があるが、現実はほど遠い。

 少なくともこうした「ゴネ得」を狙う行為が繰り返されるなら、海外からの投資が今後一段と冷え込むことになるという認識と覚悟が必要だ。

 広州=中村裕

 

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中央銀行は持ちこたえられるか2016年11月22日

ハイパーインフレが来るとしたら、いつ来るのか。

いつまで保つのか?

中央銀行は持ちこたえられるか ──忍び寄る「経済敗戦」の足音 (集英社新書) 新書 – 2016/11/17
河村 小百合 (著

2016年11月22日 00:01 アゴラ 

池田 信夫

本書のタイトルはわかりにくいが、「持ちこたえる」の目的語は「金利上昇」あるいは「国債暴落」だろう。つまり日銀がこのまま量的緩和を続けて金利が上昇した場合に、そのバランスシートはどうなるのかという話だ。

答は明らかである:日銀は大幅な債務超過になる(すでになっている)。これは本書に引用されているように今年の国会でも議論された。

前原委員 独立法人経済産業研究所の試算、これは、2016年末に恐らく365兆円に保有国債は達するであろう。仮に長短金利が2%上昇すれば、平均残存期間8年の日銀保有国債の時価は約14%低下をして、そして日銀の損失は51兆円になる。こういう試算も出ているわけです。

黒田参考人 日本銀行の使命は、物価の安定と金融システムの安定ということでございます。[…]財務の問題、その可能性を言って金融政策をしない、あるいは物価の安定、金融の安定の目標を達成しないということではいけないと思っております。

前原委員 つまりは、国民負担は生じ得るということを認められたわけですよ。

その通りである。今年中に(自己資本6兆円の)日銀は40兆円以上の債務超過になり、これは最終的に国民負担になる。問題は、それで何が困るのかということだ。シムズも指摘するように、中銀はいくらでも通貨を発行して借金を返せるので、債務超過になること自体は問題ではない。

しかし日銀が通貨を増発してインフレになると、「インフレ税」は国民負担になるので、それをコントロールするためには政府の資本注入が必要になる。数十兆円の財政支出は政治的に困難だが、政府が資本注入をいやがるとインフレが加速して(理論的には)ハイパーインフレになる。

巨額の国民負担はすでに発生しているので、問題はそれをどう処理するかだ。究極の選択は、増税かインフレ税かということだ(IMFのような「最後の貸し手」に頼ることは債務の規模が大きすぎて無理だろう)。普通は本書のようにインフレ税は好ましくないと考えるが、それは自明ではない。

消費税を30%に上げることは政治的に不可能に近いが、インフレは政府が資本注入を拒否すれば起こる。それによって金融資産は大幅に減価するが、政府があらかじめ警告すればいい。銀行の債務超過は、日銀が融資すればいい。投資家は海外に資産逃避するだろうが、それによって円が下がれば損失を海外の投資家に転嫁できる。

オフバランスの社会保障債務を含めて2000兆円を超える日本の政府債務を、増税や歳出削減だけで正常化することは不可能だ。ピケティも推奨するように7%のインフレを10年続ければ、日本の政府債務は半減して将来世代の負担も減る。重要なのはインフレ率をコントロールすることで、これは日銀だけではできない総力戦である。

国民負担を最小化するには、金利上昇が始まったとき、政府と日銀がどう対応するかを決めておくべきだ(シムズをジャクソンホール講演に招いたFRBはすでに考えていると思われる)。資本注入は為替介入のような一時的な措置で、最終的には一般会計に計上する必要がある。金利上昇は必ず起こる。原発事故と同じく、安全神話がもっとも危険である。

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地震で円高?2016年11月22日

http://mituwasou.com/fxblog_beginner/free/earthquake.htmlより

FX相場は日本の地震や災害時になぜ円高に動く?

 FX初心者の方々から「日本で地震発生時、為替はどのように動きますか?」や「日本で災害が起きるとなぜ円高に動くのですか?」または「災害時のトレードにはコツがありますか?」と言った質問を頻繁にお受けします。

 そうした質問が多い理由として、日本が地震・台風それに地滑り・洪水など世界を見渡しても「これほど災害の多い国は他には無い!」と言えるほど災害が多い国ですので、必然的に、日ごろから危機意識が鍛えられているのだと思います。

震災後の相場イメージ

 そこでここでは、そんな初心者トレーダーの疑問に答える意味も込めて、「日本で災害が発生した場合、なぜ為替相場(FXマーケット)は円高に動きやすいのか?」と言う根本となる理由と、「災害発生時にはどのようにトレードを組み立てていくと利益が出やすいのか?」と言うお話をしてみたいと思います。
 ※ 災害発生時には『まずは身を守ることが何よりも1番大切である』と言うことを深くご理解して頂けた上でお読みください

リパトリエーション(リパトリ)の動きとは?

 震災に限らず、日本で災害が起こった後にマーケットが円高に振れると、突然、頻繁に使われるようになる「リパトリエーション(リパトリ)」と言うマーケット用語があるのですが、この「リパトリエーション」と言う言葉について一体どのような意味で使われるのかご存知でしょうか?
 ※ 中にはレパトリエーション(レパトリ)と言う表現をする場合もありますが英語では「Repatriation」と書きますので、本サイトにおいては英語発音に近い「リパトリエーション(リパトリ)」を採用しております

リパトリエーション(本国送還)イメージ

 そもそも「リパトリエーション(Repatriation)」は英語で「本国送還、帰還」と言う意味で、海外生活時の資産を引き払って帰国することになった「引揚者」と言う意味もあります。

 英語では「本国送還」と言う意味を持つリパトリエーションですが、マーケット用語でも同様に「海外に持っている資産を日本(本国)へと戻す(帰還させる)」と言う意味で使用し、「企業や投資家、金融機関それに保険会社などが海外に持っている株や債券を売り払い日本円へと変換すること」を指します。

 例えば、「保険会社(A)」がアメリカの「大手企業(B)」の株を大量に持つことにより資産運用をし、その利益により保険会社が運営されている場合、「保険会社(A)」が「大手企業(B)」の株を売り払い、「大手企業(B)の株 ⇒ アメリカドル ⇒ 日本円」と、日本円にまで資産を戻すことを「リパトリエーション」と言います。

 大筋の「リパトリエーション」についての知識はこんなところで十分ですね。

 さて、ここからがトレーダーとして重要な知識となってくるのですが、「“保険会社が海外で運用している資産を売り払い日本円にまで資産を戻す必要がある時”、つまり“リパトリエーションをする必要がある時”と言うには一体どのような時だと思いますか?」

 答えは簡単ですね。そうです。「保険料の支払いがある場合です」

 保険会社は、保険加入者である私たちから保険料を受け取り、その集めた保険料を投資・運用資金として利用し利益を生み出すことで、高額な保険料の支払いを行った場合においても企業として儲けが出る仕組みを作っています。

 つまり、保険会社に掛けている保険金と言うのは、保険会社により「日本の株や債券、または海外通貨・海外企業の株や国債」と言った様々な資産へと投資が行われており、災害のような大規模な保険料支払いが予想されるケースにおいては、投資中の資産を現金化(日本円化)する「リパトリエーション」が起こる(起こりやすい)と言われています。

 そして、この保険会社を代表とした本邦企業によるリパトリエーションの動きこそ、「日本での大規模災害発生時に円高に動く理由」だと言われています。

地震後の円買いは日本に起きる不思議な売買?

 「リパトリエーションの動きが日本での災害発生時に大きな影響を与えている」と言うことについてご理解頂けたところで、続いては、多くの方が疑問に思うことについて回答させて頂きたいと思います。

 それは、「本当にリパトリエーションの動きで震災後には円高になるの?」「日本での災害発生が意味するのは日本の経済が不安定になることを意味するから、日本円も売られて当然じゃないの?」と言った疑問です。

 正直、このような災害時における円高の動きに関する質問を、私は、身近な友人はもちろんのこと、ビジネス先の知り合いの知り合いから、散髪にたまたま居合わせた個人投資家の方まで、老若男女、幅広い業種の方々から幾度と無くお受けしました。

 まずは、「FXは論より証拠」と言うこともありますし、過去30年間の実際の米ドル円の値動きをチャートで見てみましょう。

阪神大震災・東日本大震災時の長期ドル円チャート

 日本は数多くの災害を経験していますが、その中でも代表的な大きな地震災害となったのは「阪神大震災」と「東日本大震災」でしょう。

 実は、こうして30年の長い期間を切り取ったドル円の値動きを見てみると、阪神大震災が発生した1995年につけたドル円の最安値(円を主に見ると円最高値)を破ったのは、東日本大震災が発生した2011年となります。

 アナリストの中には「日本はデフレ状況にあったのだから、円高方向に動いていたのは当然のことで、ドル円の最安値更新は震災がたまたまそれに重なっただけの偶然である」と言う発言をする方もいらっしゃいますが、こうして見ると偶然にしては出来過ぎている気もします。

 そこで、もう少し分かりやすくするために表示期間を短期にして、再度、震災時のチャートを見直してみましょう。

阪神大震災時のドル円チャート

 上は、阪神大震災時のドル円チャートになりますが、震災発生後にドル円は一気に下方向(円高方向)へと舵を切り、史上最安値を更新した後、下値を探った後に大上昇を見せています。

東日本大震災時のドル円チャート

 次に、東日本大震災時のチャートですが、こちらもまた震災発生後に史上最安値を更新した後、何度か底値を探った後で上昇トレンドが発生しています。

 ドル円のように非常に取引人数の多い通貨ペアにおいて「史上最安値や史上最高値を更新する」と言うことは、今のようにコンピュータ制御が入っているマーケット環境では、瞬間的な戻りを狙った膨大な売買(下げたら下げた分を戻そうとする売買)が発生するので、“よほどの事”が無ければ更新は不可能と言うのが現実です。

 そのようなマーケット環境の中で史上最安値更新へと傾いたのは、やはり震災が“よほどの事”で有ったと言うことと、「人々のマインドに対して強い影響を与えたから」と言わざるを得ないように思えます。

 しかしながら、「震災が無ければ最安値更新は無かったのか?」と言った議論は、コロンブスの卵のように永遠に続きますので、最安値や最高値については深く意識せず、「災害(震災)と円は何かしらの関係がある」と言う風に考えておくと、いざという時に臨機応変な対応が行えるかと思います。

震災時のトレードとトレーダーの防御本能

 ここまでの解説を読んで「そっか、日本で災害が起きれば円高で良いんだな!!」と思われる方も多いと思いますが、この考えを持たれた方は、高い確率で災害時の相場に押し潰されてしまうことになるので要注意です。

 と言うのは、この記事を書き上げるに当たり、「地震と円相場」に関して書かれている本や記事、それにコラムなども幾つか読んだのですが、全部、「リアルタイムで本当にマーケットを見ていたのか?」と言うような軽い投資論、つまり「日本での地震=円高」と言う締めくくりになっています。

 しかしながら、それは「日本が特殊な条件を持った国だから」で、他の国であれば、先の質問に有ったように「災害の発生=災害発生国通貨・株の売り」で反応するのがマーケットとしては自然な流れとなります。
 ※ 日本以外の国で地震が発生した場合、一般的に「その国の通貨は売りで反応する傾向」があります

 その反応は「トレーダーとしての直感的な防御反応」とも言え、それは東日本大震災時においても例外では無く、地震発生のニュースが流れた瞬間ドル円相場は一気に「円売り方向」での反応を見せました。

 つまり、中途半端な災害時のマーケットについての意識を植え付けられてしまい、「地震発生直後に円買い」をしようものなら、トレーダーの反射行動による膨大な円売りにより発生した円安方向の波に全て絡めとられてしまうことになるでしょう。

 円買いの動きが起きたのは、第一報のパニック発生後に情報分析を行い始め、「リパトリエーションの動きが意識されてから」と言うことになるので気を付けて頂きたいと思います。ただし、大きな災害が連続して起こる場合(震災後の大規模な余震等)には、マーケットは既に学習しているので「即円買い」で反応することは意識しておきたい点です。

本当の円買いはリパトリに絡む投機筋の動きが原因

 それでは災害と円相場の関係について、最後に、他ではなかなか聞くことのできない「トレーダーにも余り知られていない災害時に円高に振れる本当の理由」をお話してみたいと思います。

 「日本で震災が起きれば円買い」と聞くと、先ほどから何度も登場した「リパトリエーション」の話題になりがちなのですが、東日本大震災のような大規模な災害が発生したにも関わらず、実際は、「震災要因となる海外資産の売却からの円買いの動き」と言うのは、ほとんど起こりませんでした。

震災とトレーダーと義捐金のイメージ

 あれほどの大規模な災害であったにも関わらず、なぜリパトリエーションの動きは発生しなかったのでしょう?それには日本企業の大きさが影響しています。

 そもそも日本の保険会社と言うのは、世界を見ても大規模であり莫大な資産を運用しているのですが、基本的に海外投資は高利回りとなる一方でリスクが高いことから運用比率は小さめに設定されており、今回の震災時の保険料支払いに関しても主だった海外資産の売却を行う必要無く、国内資産だけで十分に賄うことができました。
 ※ そもそも生命保険は「自然災害による死亡は免責条項」だったりします(東日本大震災時は特別対応)

 それでは、なぜリパトリの動きが円高を生んだと言うのでしょう?

 実は、震災の裏側では海外投資家による「日本の株買いの動き」と言うものが非常に密接に関係しており、災害時に彼らがとる行動こそが「円高に動く最大の要因」と言う見方があります。

 日本の株式相場は、日本で震災や災害が発生すると円相場が円売りで反応していても、その動きを全く無視するかのようにして「売り一辺倒」の動きを見せます。

 そんな中、海外投資家もまた、防御本能から持ち株を売りたい訳ですが、あの早いマーケットの中で持ち株を全て売りきるのは至難の業ですし、逆に売りきってしまっても残るのは大きな負債だけです。

 そこで、投資家の中には「持ち株を売り払わずに下がっていくマーケットに耐えよう」と言う考えが生まれ始めるのですが、彼らの多くは高いレバレッジを掛けたトレードを行っているため、「証拠金としての日本円」がどうしても必要になります。

 そうです。この自分の持ち株を守るために必要だった証拠金の日本円こそが、「震災時に円買いで動く」と言う事実と深い関わりがあるのです。

 株が下がれば下がるほど証拠金としての円が必要になり、海外勢は更なる「円買い」を起こすようになり、震災後は加速度的に下げていく株式相場に呼応するように円が買い進められます。

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 そして、史上最高値が射程距離へと入った時、投機筋は「リパトリエーション」と言うキーワードを大々的に掲げ、一気にストップを巻き込む取引(仕掛け)を行います(東日本大震災の時は、日本のFX会社のメンテナンス時間を狙ってのストップ狩りトレードが行われました、通称:メンテアタック)。

 マーケットは後で考えると「なぜ?」と思えるようなことは多くありますが、多くの場合、「トレーダーの条件反射と経験則」によって左右され、特に、阪神大震災時に最安値を攻略したイメージが東日本大震災時に引き継がれたところも大いに影響を与え、円高方向への動きを作っていくことになりました。

 震災後は、「トレーダーは日本の一大事まで金にするのか!?」と言う罵倒を受けることもありますが、日本の一大事にも関わらず、冷静沈着に行動し、日本の資産を守りきったのもまたトレーダーです。日本に災害が発生している中でトレードをしていても胸を張っていてください。

 そして、震災後にこの記事が切っ掛けになり少しでも利益を出すことができたならば、その利益のほんの一部で良いので被災地に義捐金として送って頂けるような流れとなれば、この記事を書いたトレーダーとして、そして日本人として本当に嬉しく思います。

FX相場は日本の地震や災害時になぜ円高に動く?のまとめ

 これまでの「FX相場は日本の地震や災害時になぜ円高に動く?」のまとめです。

  • 円高に振れるのはリパトリエーションと投機筋の円買い
  • 震災後直ぐに円買いをすると危険(投資家の防衛本能)
  • 震災後の株の動きが円買いを呼ぶ
  • 利益が出れば一部を義捐金とする流れを・・
カテゴリー:Diary

止まらぬ「トランプ円安」 見えてきた110円台2016年11月16日

止まらぬ「トランプ円安」 見えてきた110円台
経済部 浜美佐

2016/11/16 11:26
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日経web より
 

 

 外為市場で「トランプ円安」が巻き起こっている。15日の海外市場で円相場は約5カ月半ぶりに1ドル=109円台に下落。ドナルド・トランプ米次期大統領の経済政策への思惑がドル買いを誘っている。米大統領選前には遠かった110円の大台が近づいてきた。

 16日午前の東京外国為替市場でも円は一時109円台を付けた。1週間前の米大統領選でのトランプ氏の勝利が、それまで100円台前半で推移していた円相場の潮目を大きく変えた。

 15日の海外市場では、注目度が高かった10月の米小売売上高が市場予想を上回る改善ぶりを示したこともドル買いの材料になった。フィッシャー米連邦準備理事会(FRB)副議長やローゼングレン・ボストン連銀総裁などのFRBの幹部らが相次ぎ12月の利上げに前向きな姿勢を見せたと報じられたことも、ドル高への流れを後押しした。

 加えて、米大統領選後に軟調となっていたブラジルやメキシコなど中南米の新興国の株や通貨に持ち直しの兆しが出てきたことも投資家心理の改善につながった。「円安の追い風が次々に吹いおり、110円もあっさりと通過するかもしれない」(シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジスト)。外為市場ではこんな声すら聞かれ始めた。

 とはいえ、市場の一部には急ピッチな円安の動きに警戒感も漂う。この1週間での円相場の下落幅は8円。「あまりにも円の下落のスピードが速すぎる」と野村証券外国為替部の高松弘一エグゼクティブ・ディレクターは指摘する。急ピッチな相場の流れにはどこかで反動が来る可能性も捨てきれない。

 トランプ次期大統領が掲げる大型減税やインフラ投資などの政策も現時点では確約されているわけではない。それでも米景気に対する膨らむ期待が、ドルを押し上げているのが現状だ。このドル高が米企業の業績を押し下げ、結果として現実の米国の景気に水を差す懸念もある。

 「いまはこの相場の流れに乗るしかない」――。トランプ円安に踊らされる為替ディーラーの声は不安混じりだ。

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連年贈与の誤解2016年11月16日

塩川税理士事務所さんHPより

極寒?

「毎年連続して贈与(連年贈与)すると遡って贈与税が課税されると○○税理士のHPに書いてあるけど大丈夫?」とのクライアントの指摘ではじめて気が付きました。色々HPを閲覧してみると確かに税理士どころか税務関係のほとんどのHP(調べた限りの)には、「毎年同じ時期に同額を贈与し続けると贈与開始の時に遡って贈与税が課税される」「金額や時期を毎年かえないと危ない」等と誤った説明が書いてあります。そしてその設例には「毎年、子に100万円ずつ10年間にわたって贈与すると、贈与を始めた年に、有期定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税が課税されます。」といった内容のものが多く見られました。不思議なことにどれも課税の根拠となる条文等を書いていませんでしたが、おそらく元ネタは、国税庁のタックアンサーのようです。

Q 毎年、子に100万円ずつ10年間にわたって贈与することとしましたが、1年間では基礎控除額である110万円以下となるため、贈与税の申告納税は不要ですか。
A 1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、契約をした年分に、有期定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税の申告が必要となります。(タックスアンサーより原文どおり)

この回答事例について検討しますと
「親から子に100万円づつ10年間贈与する契約を行ったが贈与税はどうなりますか」と聞いているわけです。この答えは、1000万円を10年間に分割して支払う有期定期金の権利を贈与する契約をしたのですから、契約時に1000万円の贈与があったものとして課税されます。ちなみにこの贈与に対する税額は、82万円です。
 計算
有期定期金の評価をしますので1000万円×60%(期間10年として)=600万円
600万円-110万円=490万円(控除後の課税価格)
490万円×30%-65万円=82万円(贈与税額)

この事例に対する感想としては、当局の立場では、こう聞かれればこう答えるしかないということです。
しかし逆に「10年前から毎年100万円づつ贈与してきたが問題がありますか」と聞かれるとどうでしょう。おそらく「その贈与が法的に有効である限り贈与は非課税の範囲内だから申告の必要はありません」と答えるしかないでしょう。つまり毎年の判断で法的に有効な贈与を行えば結果的に同時期同額であってもその都度の贈与契約となるのでこれを連年贈与として課税されることはないということです。基本的に例えば10年前開始した連年贈与を遡って10年間の有期定期金の権利として課税するというのは、有期定期金であることの事実認定と10年という期間の認定をどうするのか、贈与税の課税権の時効(正確には除斥期間)6年から考えて10年前に遡って課税できないがどうするのか、また5年目に課税するのであれば一体何年の有期定期金として課税するのか等。同時期同額の連年贈与を贈与開始時に遡って課税するという法律や通達が無い以上このような法律構成で課税できないことになります。
ただし、タックスアンサーの設例については法律論として有期定期金の贈与契約の有効性には疑問が残ります。

それにしてもなぜか「連年贈与は遡って課税」のフレーズだけが一人歩きしているようです。さすがに私と同じ相続税専門の税理士はこんな解釈はしていないでしょうが、ひどい例になると20年前に遡って課税される(昭和63年分の期限後申告?時効なんて関係ない!)とか、設例で定期金の評価(10年で60%相当額)をしないで贈与税を計算しているHPもありました。おそらくは、安易に他のHPから拾ったために誤って広がってしまったのでしょう。少し考えれば気づくことです。税務署にそうのように指摘されて疑問も持たないで修正に応じるのでしょうか。専門家がHPで検索して答えを出すのはいかがなものか。根拠条文を確認するのは常識なのですが。

この連年贈与の問題の本質は、このような毎年同額と言うようなことではなくてその贈与が法的に有効な贈与か。ことばをかえれば税務当局に反証できる贈与かということがもっとも重要なことなのです。
この連年贈与でもっとも調査で否認される可能性が高いのが贈与の有効性です。相続税調査で故人が非課税枠内の贈与を長年行ってきたものの、その贈与資金を入金した預金通帳を故人自身で管理していたとなれば、何十年間もコツコツと続けてきた贈与が無効として全額相続財産に加算されることになります。
そのために贈与の有効性をはっきりさせる必要があります。
具体的には、
何よりも贈与を受けた者(受贈者)が贈与を受けたことを知っていること。
贈与契約書を作成して双方が署名捺印を行う。確定日付があればなお良い。
受贈者が、贈与財産を管理する。(使用や処分可能な状態にあること)
預金通であれば受贈者が印鑑と通帳を管理する。
等です。実際には、事実関係により最適な方法がありますので、税理士に確認してください。

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トランプ大統領は日本の安保再点検の好機  編集委員 高坂哲郎2016年11月12日

日経WEB
(3/3ページ)2016/11/11 6:30[有料会員限定]

 トランプ政権についても、政策スタッフとして集まった人物らがいつまで彼を支え続けるかはまったく見通せない。トランプ氏と意見が合わず、同氏が自分のテレビ番組で決めぜりふにしていた「お前はクビだ」を浴びせられて政権を去る人が相次ぐのかもしれない。お追従はうまいが、実務経験の乏しい人ばかりが目立つような政権になるかもしれない。その時、米国は安定した安保政策を維持できるだろうか。

■日本に求められる「防衛リバランス」

 タイミングが悪いことに、世界には今、米国主導の国際秩序に挑戦する国々が相次ぎ出現している。中国は南シナ海などで勢力を広げ、ロシアは東欧で武力を背景に周辺国を威嚇し続け、北朝鮮は核という刃物を振り回し続けている。日本は、この3カ国がそろって近隣に位置するという世界の中でも特に運の悪い国である。

 そのような日本が「トランプ時代」に向き合う際に留意すべきは、「自分のことは極力自分でやる」という基本姿勢なのだろう。安保面では、これまで米国に頼ってきた打撃力や遠距離への兵力投射力、情報収集能力などを従来以上に高め、国民の生命を守り切る体制も強化する「日本防衛の再調整(リバランス)」を明確に打ち出したいところだ。

 それによってトランプ政権の米国が「日本が自主性を強め、米国から離れ始めた」と危機感を持てば、日米同盟を軽視しなくなるだろう。そうならなければ、日本は引き続きリバランスを進めればよいだけの話である。

 情勢が不透明な中でただ一つ確かなことがある。それは、米国の外交・安保政策をリードしてきたあの国の知識階層が国家をコントロールする影響力を大幅に失ったという冷厳なる事実だ。従来、日本ではそうした人々を招いてお話を伺いたがる傾向があったのは事実である。ただ、そんな営みは「強く安定した米国がいつも日本のそばにいてくれる」という幻想を日本人に与える一種の有害さを含んでいたように思われる。トランプ政権の誕生は、「思考停止なまま、とにかく米国に追従していればよい」という甘い機運を打ち砕いた点で、日本にとってプラスな動きと言えるのかもしれない。

高坂哲郎(こうさか・てつろう)

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FT]トランプ氏の「米国第一」、退廃と衰退の始まり2016年11月12日

2016/11/11 3:30日本経済新聞 電子版

 ドナルド・トランプ氏が次期米大統領に決まったのは11月9日朝、ベルリンの壁崩壊からちょうど丸27年後だったことは何とも皮肉だ。壁の崩壊は米国のリーダーシップが勝利した瞬間だった――そして楽観主義と、リベラルで民主的な理念が世界中に広がる時代を招き入れた。トランプ氏の勝利で、その時代は決定的に終止符を打たれた。

勝利のうたげの後、トランプ氏は米国をどこへ連れて行くのか(9日、ニューヨーク)=ロイター

 扇動的に人種差別発言を繰り返す同氏の当選は、第2次世界大戦が終わった1945年以降、米国が国内外で推進してきた民主主義への手痛い打撃となる。

 この米国の関与の姿勢を最も雄弁かつ感動的に表したのは1961年のジョン・F・ケネディ元大統領による言葉だ。「我が国に好意を抱こうと悪意を抱こうと、すべての国に知らせよう。我々は自由の存続と成功を確保するためには、いかなる代償も払い、あらゆる重荷をいとわず、どんな困難とも対峙し、あらゆる友人を助け、いかなる敵とも対決する決意であることを」

■ケネディのビジョンとの悲しいコントラスト

 ケネディのビジョンの寛大さと広大さ、力強さはトランプ氏の宣言――我々の計画は米国が最優先となり、グローバリズムではなくアメリカニズムが信条となる――の狭量な国家主義との悲しいコントラストを描く。この2つのビジョンの違いは計り知れないほど大きく、不吉だ。米国の戦後世代が世界中の自由を守ると固く誓うようになったのは、理想主義からだけではなかった。ケネディが述べたように、この世代は「戦争によって鍛えられ、つらく苦い平和によって自制心を培った」。トランプ氏に投票した世代と好対照を成す。すなわちファストフードによって太らされ、テレビのリアリティー番組によって幼稚化された世代だ。

 ケネディ世代は大恐慌と第2次世界大戦から厳しい教訓を学んだ。あの世代は「アメリカ・ファースト(米国第一)」――米国を広い世界の問題から隔絶しようとする政策――が最終的に、経済と政治の大惨事につながったことを知っている。だから1945年以降、共和党、民主党双方の新世代の指導者たちは世界のために経済と安全保障の構造を築いた。米国のリーダーシップと、北大西洋条約機構(NATO)、国連、世界銀行といった国際機関、同盟関係を軸とする構造である。

「トランプ阻止で団結しよう」と書かれた段ボールの壁をつくり、選挙前投票を米国人に呼びかけるドイツの団体。ベルリンの壁が崩れて丸27年後の同じ日、くしくもトランプ氏が当選した=ロイター

 かつて知っていたとしても、トランプ氏は1930年代の経験から引き出された教訓を忘れてしまった。同氏が抱く嫌悪感は、米国自体の機関に対してよりも国際機関に対して深いように見える。トランプ氏の提案する政策は、何十年にもわたって米国が支え守ってきたリベラルな世界秩序をひっくり返す恐れがある。

 とりわけ、世界に米国が向き合うときの2つの超党派的な大原則に、同氏は異論を唱えた。1つ目は、開かれた国際的貿易体制への支持。2つ目は、世界の安全保障を支える米国主導の同盟関係への関与だ。

 トランプ氏は保護主義者を自認する、第2次世界大戦以前から初めての大統領になる。北米自由貿易協定(NAFTA)など、米国の「ひどい」貿易協定を再交渉することを約束し、世界貿易機関(WTO)からの脱退をちらつかせ、中国製品に45%もの関税をかけると述べた。もしトランプ氏がこうした脅しを実行するようであれば、世界的な貿易戦争に火を付け、多分に世界を景気後退に陥れるだろう。米国が保護主義政策をとったことで大恐慌の影響が増幅された30年代の状況と似る。

 トランプ氏が国際安保体制に与える影響も、それと同じくらい深刻になりかねない。次期大統領はNATO同盟国やアジア地域の同盟国である日本や韓国に対して、防衛義務の対価をもっと負担しない限り、安全保障上の関与を米国が守るかどうか疑問を投げかけた。同盟国による「ただ乗り」に対し、米国人は党派に関係なく批判的だ。

フィリピンと合同演習をする米軍。アジア太平洋地域での米国の関与は日本をはじめとする周辺国にとっての関心事だ(10月7日、フィリピン北部サンバレス州)=ロイター

 トランプ氏は、米国は何があろうと同盟国を軍事攻撃から守るかどうかも明言していない。同氏がロシアのプーチン大統領を称賛していることもあり、米国はウクライナや東欧でのロシアの新たな侵略に反対しないのではないかとの懸念を呼んでいる。特に日韓は、東アジアでの中国の勢力圏拡大を、米国が容認するようにならないかと恐れている。

■関与やめれば今より貧しく落ちぶれる

 中東での戦争にへきえきし、国際貿易が国内経済に問題を引き起こしていると説得されているようにみえる国では、「米国第一」政策に誘惑されるのは無理もない。米国には、経済を支えるだけの巨大な国内市場があり、国の安全も大西洋、太平洋という2つの大海で守られている。だが、もし世界から身を引けば、米国はやがて、今より貧しくなり落ちぶれるだろう。そして1930年代と同じように、最後には米国自体の安全と繁栄も、国際貿易の崩壊と権威主義者の復活に脅かされることになる公算が大きい。

 だが、こうしたことはすべて将来にあり、推測の世界に存在するものだ。現時点では、米国と世界は単純で気のめいる真実と直面している。米国大統領の座、かつてリンカーン、ルーズベルト、ケネディといった偉人が占めた地位が、薄っぺらいペテン師のものになってしまった。

 トランプ氏は「米国を再び偉大にする」と約束した。しかし、同氏の大統領就任は、実は米国の退廃と衰退を暗示している。

By Gideon Rachman

(2016年11月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

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